『パターソン/Paterson』感想 | カプチーノを飲みながら

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ジム・ジャームッシュ監督の新作

『パターソン/Paterson』を観ました。2017年一本目。

イタリア版のキャッチコピーは“美しさはしばしば、小さな出来事の中にある”

 

第69回カンヌ国際映画祭、コンペティション部門選出作品

イタリアに住んでて良かったなと思うことは、映画祭や欧米の作品を日本より早く観ることができること。日本の半額以下の値段で!もちろん伊語の壁はありますが。

 

予告編(英語版)

 

日本語版予告も公開されたので、貼っておきますね。

 

解説

『ストレンジャー・ザン・パラダイス』から『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』まで、米インディペンデント映画界の雄というべきジャームッシュ監督が本作で描いたのは、バスの運転手として働く傍ら詩をしたためるパターソン(アダム・ドライバー)の1週間だ。乗客の会話に耳を澄まし、仕事が終われば家の中をモノクロにどんどん改造していくクリエイティブで美しい妻ローラ(ゴルシフテ・ファラハニ)の話を聞き、ブルドックの散歩の途中でバーに立ち寄ってビールを1杯飲む……というパターソンの日々をオフビートにつづる。シネマトゥデイより
 

先に結論を書いてしまうと

今年のマイベスト映画です!!

(2017年始まったばかりだけどww)

 

 

主演は

スター・ウォーズEP7でカイロ・レンを演じたアダム・ドライバー

アダム・ドライバーがバスドライバーを演じてましたw

妻ローラ役、イラン人女優のゴルシフテ・ファラハニ、カンヌでは仏語でインタビューに答える場面も

愛犬のマーヴィン、カンヌでパルム・ドッグ賞を受賞しました(オス役だけど本当はメス)

 

以下、ネタバレなし感想。

 

簡単に言うと

詩についての映画で、作品自体が詩のような映画です。

パターソン縁の詩人、ウィリアム・カルロス・ウィリアムズや

イタリアだとダンテ・アリギエーリやペトラルカの名も出てきます。

 

本作は、主人公パターソンの一週間を描いているんですけど

鑑賞中、映画に毒されている僕は

 

“運転するバスが、悲惨な事故を起こしてしまうんじゃないか?”

“奥さんとは仲が良いけど、終盤に修羅場があるんじゃないか?”

“犬の散歩中に、何か事件に巻き込まれるんじゃないか?”

 

と、余計なことを考えてしまいまして。

その度に

 

“あぁ、そうだ。これはジャームッシュ監督の映画だった。

そんな映画的な事件は起こらないんだった”

 

と、思い直したりして。

あるがままの日常を慈しむ映画なんだなって思いました。

 

愛犬マーヴィンの散歩中に小さな出会いもあります

夫婦の穏やかで温かな関係がとても心に沁みるのでした

主人公には、詩を通して様々な出会いがあるんですけど

これは不自然なことではなくて、詩の世界を探求しているからこそ出会えるのだと思います。

 

僕自身も、詩を書いたり俳句の句会に通ったりしたことがあるんですが

詩や俳句のことを考えながら日常を過ごしていると、普段気付かなかったことに気付いたり、思わぬ出会いがあったりするものなんですね。

詩を書くということは、何気ない日常の小さなことに目を向けることなんですよね。

まさに“美しさはしばしば、小さな出来事の中にある”ことに気付かせてもらいました。

 

 

映画館を出た時の、僕の顔はこんな感じでした。

『吼えろペン』より

2,3日経っても、映画の余韻が消えませんでした。

 

 

まず

主演のアダム・ドライバーが良いんですよ、とても自然で静かな演技で。

こんなに演技派だとは思いませんでした。

顔なじみのBARでビールを飲むのが毎晩の楽しみ

ジャームッシュ監督曰く

「アダムは分析的な俳優じゃなくて反応的な俳優だ。とても直観的な方法で、私が愛しているやり方だ。彼の直観は主人公が持っているものでもある」

スター・ウォーズみたいな大味な作品じゃなくて、もっと繊細な作品の方が合いますね。

 

 

舞台となったニュージャージー州パターソンを調べてみたら

アフリカ系黒人の他、ヒスパニックや中南米、アジア系の移民も多いようで、作中にも様々な国籍の人達が登場します。

そして、永瀬正敏が日本人の詩人役として登場します。

この映画で、日本人が重要な場面で出てくることが何かとても誇らしい。

ジャームッシュ監督とは『ミステリー・トレイン』以来タッグの永瀬正敏

永瀬のFacebookによると、ジャームッシュ監督から「脚本を書きながらEARL(※永瀬のニックネーム)の事をずっと思っていたんだ。君の事を思いながらこのシーンを書いた。たった1シーンだけだけど、ラストシーンでとても重要な役なんだ。出演してもらえないだろうか?」と打診を受けて出演を快諾したといい、昨年10月に単身アメリカに渡って撮影に臨んだとのこと。シネマトゥデイより

 

64歳になったばかりのジム・ジャームッシュ監督

1月22日はジャームッシュ監督の誕生日でした!

本作についての監督コメント。

ジャームッシュ監督は本作で「進む道は自分で選べる」ということを描いたと語る。「パターソンの妻ローラも主婦という言葉から一般に想像する姿とは違う。家に居てもとてもアクティブな表現者。自分が何者であるか、ということを自分で選んでいるんだ。それはパターソンにも言えて、彼はバスの運転手だが、詩を書くという選択をしている。わたしたちは自分で選択ができる幸運に恵まれている。この映画はそういったことを祝福している」シネマトゥデイより

 

監督のコメントは、僕も一人の表現者として色々と考えさせられますね。

クリエイティブでいることの素晴らしさ、大切さも描いている作品です。

 

インディペンデント映画なので、万人受けする作品ではありませんが

僕は一生の宝物にしたいと思います。

 

 

 

【追記】

DVDを購入しました(伊語版)!

日本ではまだ公開されてませんが、イタリアは年始公開だったのでもうDVDが出てるのです。

DVDパッケージは映画版とほぼ同じ

 

初見は、作品の幸福感に包まれて忘れてしまってましたが

物静かなパターソンよりも妻ローラの方がかなり個性的。

ローラもパターソンとは違ったクリエイティブさを持っていて、作品にいい雰囲気を出してますね。

二人の距離感がとてもいいんですよね

 

パターソンの一週間を観た後だと

僕のありふれた毎日も、どこか新しく輝いて感じられる。いつもの日常が違って見える。

そう感じさせてくれる映画だと思います。

 

うーん、今年のマイベストがオールタイムベストになりそう。

 

 

 

 

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予告編と劇中で使用されている楽曲『I'm Still A Man』を貼っておきます。

映画では、歌なしで使用されていました