けさ、道東ならではの冬の青空を見て思いました。
「そうだ、屈斜路湖に行こう!」
先日、ニュースで「屈斜路湖に御神渡り出現」と
伝えられていたのを思い出したのです。
「御神渡り」とは、凍った湖の表面で
氷の板が立ち並ぶように隆起する現象です。
湖の表面が寒暖の差で収縮と膨張を繰り返した結果、
このようなことが起こるそうです。
屈斜路湖ではほぼ毎年起こる現象らしいのですが、
札幌生まれの私はまだ見たことがありませんでした。
最近、仕事のために職場に籠もってばかりで、
道東ライフを楽しんでいないことを残念に思っていたので、
久しぶりに出かけることにしました。
釧路から車でおよそ2時間。
屈斜路湖が見えてきました
↓
お分かりでしょうか?
凍った湖面の上に雪が積もっています。
さて、「御神渡り」を探そうかな・・・と思った私の目に
衝撃的なものが飛び込んできました
↓
白鳥の群れです!
屈斜路湖には、掘ると温泉が出てくる
「砂湯」というところがあります。
この辺り、温かいので白鳥たちが格好の
越冬地にしているのです。
それにしてもこんなにいるとは。驚きました。
そして・・・白鳥たちは非常に「人慣れ」しているのです。
次の写真は湖畔にあるおみやげ屋の前で
撮ったものです
↓
小さな子どものすぐ近くまで接近する白鳥。
実は、えさを求めています。
おみやげ屋さんではポップコーンなどを販売しており、
観光客が白鳥に与えられるようになっているのです。
「自然状態を保つ」という観点からはよろしくないのでしょうが、
北海道では野生動物にえさをあげている観光客をよく見かけます。
白鳥の数に圧倒されつつ、
私が気になってならないことがありました。
写真に写っているおみやげ屋さんで流れているジャズです。
繰り返し流れていたのが、ソニー・ロリンズ(ts)の
「コンテンポラリー・リーダーズ」に収録されている
「アイヴ・トールド・エヴリー・リトル・スター」でした。
何曲かのうちの1曲として流れるのなら分かるのですが、
なぜかリフレインされているのです。
店主がよほどのロリンズ好きなのか?
それならなぜ「セント・トーマス」ではないのか?
・・・などと考えていましたが、
そのうちにこの曲が目の前の光景とマッチしてきました。
とぼけた曲調と、人間と白鳥のたわむれという
不思議な状況が合っているように思えてきたのです。
自宅に帰ってきてから、
さっそく「コンテンポラリー・リーダーズ」を取り出しました。
通して聴いてみると、ユーモアの感覚が全体を
貫いているセッションで、休日の夜にぴったりです。
このレコーディングは、ロリンズのために
コンテンポラリー・レーベルに所属する
スター・プレイヤーを集めた企画もの。
ハンプトン・ホーズ(p)のように
ロリンズと初共演のミュージシャンもいましたが、
全員が肩肘張らず、「軽く流した」雰囲気が何ともいいです。
1958年、10月20~22日、ロサンゼルスでの録音。
Sonny Rollins(ts)
Hampton Hawes(p)
Barney Kessel(g)
Leroy Vinnegar(b)
Shelly Manne(ds)
Victor Feldman(vib)
①I've Told Ev'ry Little Star
おみやげ屋さんでリフレインされていた曲が冒頭を飾っています。
これを聴くと、多くの方は微笑んでしまうのではないでしょうか。
メロディ部、ロリンズの大らかなテナーに、
ギター・ベース・ドラムというリズム陣が作り出すくつろいだムード。
リズムのブレイク部でロリンズが放つ
「トゥル・トゥル・トゥル」というフレーズが何とも耳に残ります。
まず、ロリンズのソロ。歯切れのいいリズムに乗って快調そのものです。
最初は少しスピードを抑え気味にしていますが、
だんだんテンポが上がる。
それでも、すべてのフレーズが「歌」になっているのは見事。
続いて、ルロイ・ヴィネガーのウォーキング・ベースに乗って
シェリー・マンがソロを取ります。
これが、音楽の流れを崩さない、地味でありながら
ブラシの名人芸を聞かせる素晴らしいもの。
全体に目配せしている名手、さすがです。
その後、ハンプトン・ホーズのソロを経て、再びロリンズへ。
少しスピードダウンして「歌わせ方」を変えているところなど、
非常に心憎い。
まさに、「リーダーズ」の技です。
③How High The Moon
オリジナルのライナー・ノートを読むと、
これはイレギュラーなテイクのようです。
ロリンズはこの曲をレコーディングするつもりはありませんでした。
セカンド・セッションが始まる前、マンとホーズが到着するのを待つ間に、
ロリンズはケッセルとヴィネガーとの3人でジャム・セッションを開始。
テープ・レコーダーが回されたため、このテイクが収録、
採用されたということです。
予定されていなかったとは思えないほど素晴らしい出来で、
ロリンズの優しさが良く出ていると思います。
おそるおそるメロディを吹き始めるテナー。
しかし、ベースとギターによるリズムに
スペースがたっぷりあると見て取ってか、
次第にペースをつかんでいきます。
ただ、直線的にスピードを上げていくというのではなく、
らせん状に上がっていくかのように、
「探りながら」、訥々と進んでいくのが面白いです。
月明かりの中でゆったり迷っているかのようなロリンズ、
ちょっと珍しいですね。
⑦In The Chapel In The Moonlight
あれ?こんないいバラッドをやっていたっけ?
という感じのトラック。
目立たないですが、ロリンズが実に男性的に、
丁寧に吹いています。
メンバーや、ギターが入っていることによる
影響があるのでしょうが、
粘着質ではないのに味わいがあります。
ロリンズ自身にも、「自分だけが“リーダー”ではない」
という安心感があったのかもしれません。
ケッセルやホーズのしっとりしながら重くないソロもいいです。
屈斜路湖のおみやげ屋さんで聞くと、
私が当初の目的としていた「御神渡り」は積雪のため
見えにくくなっているということでした。
結局、「御神渡り」はあきらめたのですが、
白鳥とロリンズの組み合わせにすっかり満足した休日でした。



