コンテンポラリー・リーダーズ/ソニー・ロリンズ | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。


けさ、道東ならではの冬の青空を見て思いました。

「そうだ、屈斜路湖に行こう!」


先日、ニュースで「屈斜路湖に御神渡り出現」と

伝えられていたのを思い出したのです。

「御神渡り」とは、凍った湖の表面で

氷の板が立ち並ぶように隆起する現象です。

湖の表面が寒暖の差で収縮と膨張を繰り返した結果、

このようなことが起こるそうです。


屈斜路湖ではほぼ毎年起こる現象らしいのですが、

札幌生まれの私はまだ見たことがありませんでした。

最近、仕事のために職場に籠もってばかりで、

道東ライフを楽しんでいないことを残念に思っていたので、

久しぶりに出かけることにしました。


釧路から車でおよそ2時間。

屈斜路湖が見えてきました

 ↓

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お分かりでしょうか?

凍った湖面の上に雪が積もっています。


さて、「御神渡り」を探そうかな・・・と思った私の目に

衝撃的なものが飛び込んできました

 ↓

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白鳥の群れです!

屈斜路湖には、掘ると温泉が出てくる

「砂湯」というところがあります。

この辺り、温かいので白鳥たちが格好の

越冬地にしているのです。

それにしてもこんなにいるとは。驚きました。


そして・・・白鳥たちは非常に「人慣れ」しているのです。

次の写真は湖畔にあるおみやげ屋の前で

撮ったものです

 ↓

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小さな子どものすぐ近くまで接近する白鳥。

実は、えさを求めています。

おみやげ屋さんではポップコーンなどを販売しており、

観光客が白鳥に与えられるようになっているのです。

「自然状態を保つ」という観点からはよろしくないのでしょうが、

北海道では野生動物にえさをあげている観光客をよく見かけます。


白鳥の数に圧倒されつつ、

私が気になってならないことがありました。

写真に写っているおみやげ屋さんで流れているジャズです。

繰り返し流れていたのが、ソニー・ロリンズ(ts)の

「コンテンポラリー・リーダーズ」に収録されている

「アイヴ・トールド・エヴリー・リトル・スター」でした。


何曲かのうちの1曲として流れるのなら分かるのですが、

なぜかリフレインされているのです。

店主がよほどのロリンズ好きなのか?

それならなぜ「セント・トーマス」ではないのか?

・・・などと考えていましたが、

そのうちにこの曲が目の前の光景とマッチしてきました。

とぼけた曲調と、人間と白鳥のたわむれという

不思議な状況が合っているように思えてきたのです。


自宅に帰ってきてから、

さっそく「コンテンポラリー・リーダーズ」を取り出しました。

通して聴いてみると、ユーモアの感覚が全体を

貫いているセッションで、休日の夜にぴったりです。


このレコーディングは、ロリンズのために

コンテンポラリー・レーベルに所属する

スター・プレイヤーを集めた企画もの。

ハンプトン・ホーズ(p)のように

ロリンズと初共演のミュージシャンもいましたが、

全員が肩肘張らず、「軽く流した」雰囲気が何ともいいです。


1958年、10月20~22日、ロサンゼルスでの録音。


Sonny Rollins(ts)

Hampton Hawes(p)

Barney Kessel(g)

Leroy Vinnegar(b)

Shelly Manne(ds)

Victor Feldman(vib)


①I've Told Ev'ry Little Star

おみやげ屋さんでリフレインされていた曲が冒頭を飾っています。

これを聴くと、多くの方は微笑んでしまうのではないでしょうか。

メロディ部、ロリンズの大らかなテナーに、

ギター・ベース・ドラムというリズム陣が作り出すくつろいだムード。

リズムのブレイク部でロリンズが放つ

「トゥル・トゥル・トゥル」というフレーズが何とも耳に残ります。

まず、ロリンズのソロ。歯切れのいいリズムに乗って快調そのものです。

最初は少しスピードを抑え気味にしていますが、

だんだんテンポが上がる。

それでも、すべてのフレーズが「歌」になっているのは見事。

続いて、ルロイ・ヴィネガーのウォーキング・ベースに乗って

シェリー・マンがソロを取ります。

これが、音楽の流れを崩さない、地味でありながら

ブラシの名人芸を聞かせる素晴らしいもの。

全体に目配せしている名手、さすがです。

その後、ハンプトン・ホーズのソロを経て、再びロリンズへ。

少しスピードダウンして「歌わせ方」を変えているところなど、

非常に心憎い。

まさに、「リーダーズ」の技です。


③How High The Moon

オリジナルのライナー・ノートを読むと、

これはイレギュラーなテイクのようです。

ロリンズはこの曲をレコーディングするつもりはありませんでした。

セカンド・セッションが始まる前、マンとホーズが到着するのを待つ間に、

ロリンズはケッセルとヴィネガーとの3人でジャム・セッションを開始。

テープ・レコーダーが回されたため、このテイクが収録、

採用されたということです。

予定されていなかったとは思えないほど素晴らしい出来で、

ロリンズの優しさが良く出ていると思います。

おそるおそるメロディを吹き始めるテナー。

しかし、ベースとギターによるリズムに

スペースがたっぷりあると見て取ってか、

次第にペースをつかんでいきます。

ただ、直線的にスピードを上げていくというのではなく、

らせん状に上がっていくかのように、

「探りながら」、訥々と進んでいくのが面白いです。

月明かりの中でゆったり迷っているかのようなロリンズ、

ちょっと珍しいですね。


⑦In The Chapel In The Moonlight

あれ?こんないいバラッドをやっていたっけ?

という感じのトラック。

目立たないですが、ロリンズが実に男性的に、

丁寧に吹いています。

メンバーや、ギターが入っていることによる

影響があるのでしょうが、

粘着質ではないのに味わいがあります。

ロリンズ自身にも、「自分だけが“リーダー”ではない」

という安心感があったのかもしれません。

ケッセルやホーズのしっとりしながら重くないソロもいいです。


屈斜路湖のおみやげ屋さんで聞くと、

私が当初の目的としていた「御神渡り」は積雪のため

見えにくくなっているということでした。

結局、「御神渡り」はあきらめたのですが、

白鳥とロリンズの組み合わせにすっかり満足した休日でした。