ジャイアント・ステップス/ジョン・コルトレーン | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。


先日、近所のコンビニで「あ、コルトレーンだ!」と

声を出してしまいました。


私が「コルトレーン」と思ったのはこちら

 ↓

スロウ・ボートのジャズ日誌-echigo beer


「全国で第一号の地ビール製造」を行ったという、

「エチゴビール」の商品です。

コンビニの冷蔵庫の片隅に置かれていました。

ちょっと高めのお値段でしたが、

こうしたラベルの商品を買いたくなるのが

ジャズ・ファンというもの。


自宅に戻ってから、PCでエチゴビールの

ホームページを開きました。

「コルトレーンのイラストを使うことになった経緯」が

書かれていると思ったからです。


しかし・・・・

どうやら、このイラストは

コルトレーンではないようです。

ホームページにはこのビールが

熟成に時間をかけたものであること、

その奥深い味と熟練のジャズ・プレーヤーの演奏を

重ね合わせている、とだけ書かれていました。


そうか・・・

確かにコルトレーンにしてはちょっと威圧感に

欠けるかも・・・・

でも、この「あおり気味」のイラストは

名作「ジャイアント・ステップス」の

ジャケットにそっくりだよな・・・・


ということで、今回は「ジャイアント・ステップス」を

聴くことにしました。

コルトレーンの超絶技巧が冴えわたるこの作品、

仕事に疲れている時はなかなか取り出しませんが、

たまにはいいかな・・・・


「ジャイアント・ステップス」については、

以下のような経緯がよく知られています。

50年代後半、マイルス・デイヴィス(tp)や

セロニアス・モンク(p)のコンボで

急成長を遂げたコルトレーン。

自分のオリジナリティを突き詰めた結果、

ものすごい急速フレーズと複雑なコード・チェンジを

身につけました。

ハード・バップから離脱しつつある瞬間をとらえたのが

この作品というわけです。


今回、改めて聴いてみると、

トミー・フラナガン(p)が意外にいい味を

出していると思いました。

かつてはコルトレーンのスピードに追い付いていない

「旧スタイル」のピアノ、という印象がありました。

それが、いま聴くと、生真面目なコルトレーンの直球勝負を

中和してくれる貴重な存在だと思えてきたのです。

月日の重なりは音楽の感じ方を変えてしまうんですね。


1959年、4月1日と12月2日の録音。


John Coltrane(ts)

Tommy Flanagan(p)

Paul Chambers(b)

Art Taylor(ds)

Wynton Kelly(p-⑥のみ)

Jimmy Cobb(ds-⑥のみ)


①Giant Steps

とにかく速い!そして、音が多い!

私は楽譜を読むことができないため、

ここでのコードチェンジの激しさがどれほどのものか

うまく説明はできません。

しかし、「とにかく尋常ではないこと」が

起きているのは分かります。

モーダルなメロディから一気にソロに突き進む展開。

コルトレーンは速射砲のように音を連打します。

このように書くと、相当無機質な音楽と思われそうですが、

彼が確信する方向へ進んでいる手ごたえがあり、

冷たさはありません。

どちらかというと、「何かに憑かれてしまった」感じ、

とでも言うのでしょうか。

コルトレーンの「自分探し」に一つの回答が出ており、

その「巨人の歩み」ぶりがすごいです。

フラナガンのソロに入ると音数が少なく思え、

訥弁に聴こえるのも面白い(笑)。


③Countdown

アート・テイラーのドラムをバックに

ひたすらバリバリ吹くコルトレーン。

極限に挑戦したかったのでしょうか、

①にも増して、もう止まらない感じです。

短い演奏ですが、「入魂」という言葉が

これほど似合うトラックも少ないでしょう。


⑥Naima

コルトレーンが妻のために作曲したバラッド。

この一曲のために救われた思いをした

ジャズ・ファンは多いでしょう。

澄み切った美しさがある曲とでも言いましょうか、

これも確信に満ちたメロディです。

コルトレーンはメロディのみを担当、

あとはウィントン・ケリーが静かで美しい

ソロを弾いています。

アルバムの中で非常に音数が少なく、

それゆえにあっという間に過ぎ去ってしまいそうな

全体の流れを押しとどめてくれる一曲です。


写真でご紹介した「エチゴビール」、飲んでみました。

長期熟成だけあって、厚みとまろやかさがある。

確かに、この「成熟ぶり」はコルトレーンのぐいぐい進む

激しさとはちょっと違うかな・・・

飲んで納得、でした。