ウィ・スリー/ロイ・ヘインズ | スロウ・ボートのジャズ日誌

スロウ・ボートのジャズ日誌

ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。


元旦、親戚宅へ新年のごあいさつに行ってきました。

そこで話題になったのが、「正月の東京」について。

東京育ちの方の指摘によると、

「正月は人が少ないから、いつもより冷える」

のだとか。


この説が正しいかは分かりませんが、

確かに正月の東京は静かですね

(初詣、バーゲン会場を除く)。

いつものゴミゴミした様子がなく、

空気もひんやりと感じられて気持ちがいいです。


静かな東京で私にとってもいいこと(?)がありました。

どうも、自宅マンションの両隣が帰省中で

不在らしいのです。

全く物音がせず、明らかに人がいない。

こうなると、ふだん抑えていた行動に出たくなります。

そう、「大音量ジャズ」です。


いつもは遠慮して絞っているヴォリュームをぐいっと上げて

聴きたくなるジャズ・・・・

私の中では、リーダーがドラムスのものに決まっています。

それも、切れのいいものを浴びるように聴きたい!

取りだしたのはロイ・ヘインズ(ds)の名作

「ウィ・スリ-」です。


ロイ・ヘインズはいまや数少ない「ジャズの生き証人」の一人。

80代半ばの今も世界中でライブ活動をしている凄い人です。

 ↓

http://ameblo.jp/slowboat/entry-10339914255.html


しかし、マックス・ローチやシェリー・マン、

エルヴィン・ジョーンズといったドラマーと比べると

リーダー作を制作する機会にあまり恵まれませんでした。

チャーリー・パーカーやスタン・ゲッツ、ジョン・コルトレーンという、

超一流ミュージシャンとがっぷり組んでいたのにも

かかわらず、です。


様々なスタイルに対応できることから、

プロデューサーが個性を見つけにくかったのでしょうか。

しかし、ドラマーとして不可欠なパワーに加え、

他のミュージシャンに対する反応の良さ、

重さと軽さのコントラストをつけるバランス感覚など、

ジャズ・ドラマーの巨人と言って間違いありません。

ちなみに彼への評価は90年代から再び高まり、

リーダー作が次々に出るようになりました。


「ウィ・スリー」はへインズの初リーダー作。

当時結成していたレギュラー・トリオで吹き込みました。

へインズはリーダーでありながら出しゃばらず、

「トリオを締める」ドラミングに徹しています。


そして、ピアノのフィニアス・ニューボーン・ジュニアが

絶好調であることも、アルバムの価値を高めています。

他のどのピアニストとも違う、速射砲的なフレーズ。

同じ「速射砲」であっても、オスカー・ピーターソンなら

快活なフレーズを楽しむことができます。

フィニアスの場合、鋭利な刃物が突然出てきたかのように、

ドキリとさせられることが多いのです。


ロイとフィニアスのパワーが結びついたアルバム、

聴いてみましょう。


1958年11月14日、ニュージャージーの

ルディ・ヴァン・ゲルダ-・スタジオで録音。


①Reflection

ピアニスト、レイ・ブライアントのオリジナル曲。

冒頭、へインズの重たいドラム・ソロによるイントロで、

このアルバムの成功を確信します。

重量感がありながら、切れ味がいい、最高のドラム。

ピアノとベースが加わると躍動感が一気に増し、

「ハード・バップの世界」へすっと入りこみます。

哀愁のあるメロディを受け、最初にソロをとるのはフィニアス。

硬質でスキのないソロです。

メロディから引き継いだ哀感を持ちつつ、

攻撃的な表情が時おり漏れるところに

天才ピアニストのすごさと狂気を感じます。

続くへインズのソロも素晴らしい!

短いながら、ドラムが「叩かれている」のではなく、

「歌っている」かのようなソロです。

大音量で聴けて良かった・・・・


③Solitaire

トニー・ベネットが歌って流行した曲だそうですが、

私は全然知りませんでした。

冒頭、フィニアスが単独でソロを弾いていきます。

ここでのフィニアスのタッチは相当強く、

ゴスペルかブルースを聴いているようです。

それが、一転、ドラムとベースが加わると

美しいバラッドのメロディをスローで

弾くのですから、驚きです。

こういう変な構成を考えたのはフィニアスなのでしょうか?

構成は変わっていても、トリオの演奏は素晴らしく、

フィニアスは曲の美しさを生かしたソロを弾きます。

続くポール・チェンバースの骨太なベース・ソロも聴きもの。

ラストで、再びフィニアスが現れて、単独でソロをとりますが、

「美しさ」とどこに行くか分からない「スリル」の

バランスが絶妙です。


重厚なドラムとピアノを堪能しました。

お隣のみなさんはいつ帰省してくるのでしょうか?

明日の遅い時間まで不在だったら、

もう少し「大音量ジャズ」を楽しめるかな・・・・