デディケーション/スティーブ・キューン | スロウ・ボートのジャズ日誌

スロウ・ボートのジャズ日誌

ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。



あけましておめでとうございます。

マイペースの更新ながら、今年もこの「ジャズ日誌」を

続けていきたいと考えています。

引き続きのご愛顧、宜しくお願いいたします。


私は新年を東京で迎えました。

西日本は大変な荒れ模様になっているようですが、

東京は天気に恵まれ、

穏やかな元旦を過ごすことができました。


初詣に出かけようと、近所の新井薬師へ。

初詣スポットとしてはそれほど有名ではない(?)ため、

気楽にお参りできると思ったのですが・・・・

お寺の前には長蛇の列が

 ↓

スロウ・ボートのジャズ日誌-新井薬師


お賽銭箱にたどり着くまで、

15分~20分ぐらい並んだでしょうか。

東京はどこに行っても行列ですね。


帰りがけに、おみくじを引きました。

私はなぜか「おみくじ運」がなく、

これまで「大吉」がほとんどありません。

「吉」あたりが一番多かったかな・・・


今回は気合を入れて「大吉」をねらったのですが、

結果は「末吉」。

仕事で私利私欲を追い求めると痛い目にあうとか、

恋愛で自分だけガツガツしてもダメだとか、

失ったものは出てこないとか・・・・・

「末吉」の内容を大ざっぱにまとめると、

今年は「自分さえ良ければ」という心を捨てないと

うまくいかない、とのことでした。


こういう時は「欲のなさ」がいい方向に働いた

ジャズを聴きましょうか。

スティーブ・キューン(p)トリオの「デディケーション」です。


スティーブ・キューンについては、近作も含め、

このブログで紹介してきました

 ↓

http://ameblo.jp/slowboat/entry-10719277204.html

http://ameblo.jp/slowboat/entry-10136365233.html


これまでご紹介してきた作品は、

演奏スタイルやテーマ設定において

「野心的」なものであると言えるでしょう。

これに対し、「デディケーション」は

肩の力が抜けた「普段着のキューン」が聴ける作品です。


「デディケーション」をプロデュースしたレーベルは

「レザボア・ミュージック」。

通好みの「B級ピアノ・トリオ」を量産している

レーベルとして知られています。

プロデューサーが

「そろそろキューンの脱力系アルバムを作ろうか」

と言ったかどうかは分かりません。

しかし、そんなことを想像してしまうほど、

「普通のジャズ」の装いを持つリラックスした作品です。


もちろん、ベテランのキューンだけに、

「安きに流れた」演奏をしているわけではなく、

ハッとするような場面もそこかしこにあります。

それでも、「名作を作ってやろう!」といったような

気負いがないところが何ともいいのです。


1997年、10月6~7日、ニュージャージーの

ルディ・ヴァン・ゲルダー・スタジオでの録音。


Steve Kuhn(p)

David Finck(b)

Billy Drummond(ds)


③I Waited For You

アルバム全体の特徴をよく示したバラッド。

キューンがこれまで何度も演奏してきた曲ですが、

その中でも「さりげない」アプローチに徹しています。

繊細なブラシに乗って、キューンが淡々とメロディを弾く。

奇をてらったことはしていないのですが、

右手がメロディをシンプルに提示する一方、

左手が意外なところで低音部のコードを交えてきます。

こうした独特のアクセントの付け方によって、

聴き手は演奏に集中していきます。

ソロに入ると、キューンの耽美的なフレーズが続き、

妖しい世界が垣間見えそうになるのですが、

最後はぐっと踏みとどまって

「普通の」ジャズの枠に入れています。

これを「物足りない」と考える方も入るでしょうが、

私は過度の緊張を強いないこのバージョンが好きです。


⑥It's You Or No One

スタンダードをトリオが快調に料理しています。

ブラシとベースが非常に歯切れのいいリズムを刻む中、

最初はやや夢遊病的に「揺れる」フレーズを

繰り出していたキューンが、次第に演奏を変化させます。

シンバルが鳴りだし、テンポが上がってきたところで

ピアノはより軽快になり、流れるようなソロが展開されていく。

コロコロと転がるかのような音のつながりが作られ、

トリオ全体が熱くなっていくのが分かります。

ベース・ソロを経て、ピアノとドラムの小節交換へ。

ビリー・ドラモンドの歯切れがよいドラムとの応酬の中、

盛り上がりが最高潮に達したところで、すっとメロディに戻る。

この辺りの潔さが、「すっきりとしたジャズ」の

あるべき形のような気がします。


この他にも⑤Please Let Go といった現代的なワルツ、

⑦For Heaven's Sake の叙情性などが忘れられない、

ピアノ・トリオの秀作です。


もうすぐ42歳になる私としては、

「2011年、野心的に攻めるぞ!」と思っていたのですが、

もう少し周囲を見つめてから行動することにしました。

おみくじの効用って、運勢を占うことではなくて、

自分を見つめ直すことにあるのかもしれませんね。