さわやかな秋晴れが広がった土曜日、
床屋に行ってきました。
床屋のご主人は、いつも作業の中盤あたりで
話しかけてくるのですが、この日もそうでした。
「もうすぐこの辺りでクリスマス・ソングが流れますよ」ー
私は不意を衝かれて「クリスマス?」と
言い返してしまいました。
ご主人によると、11月に入ると街中に
クリスマス・ソングが流れ出すとのこと。
そうか、もうそんな季節なんだ・・・。
今年は記録的な猛暑だったため、
季節の変化をなかなか実感できません。
最近、朝晩は冷えるようになってきましたが、
それでも秋が深まっている印象は
あまりないのです。
このまま年末まで一気に
なだれ込んでしまうのでしょうか?
せめて音楽だけでも秋を堪能しようと、
久しぶりにウィントン・ケリー(p)の「枯葉」を
取り出しました。
ケリーの「ヴィージェイ3部作」のラストを
飾った作品です。
ウィントン・ケリーは1931年12月2日生まれ。
39歳で亡くなるまで、
スインギーで弾むようなプレイで
多くのジャズマンから愛されました。
リーダーやサイドマンとして、
いろんな編成で演奏を残していますが、
やはり彼の特徴がよく現れるのはトリオでしょう。
この作品では、ドラムがジミー・コブです。
マイルス・デイヴィスのバンドでも共演していた仲間で、
コブの落ち着いたプレイがサウンドの鍵になっています。
「ヴィージェイ」では、他にもトリオ作品がありますが、
ドラムはフィリー・ジョー・ジョーンズ。
煽るのがうまいジョーンズとのトリオも良いのですが、
コブが相手だと、ケリーはゆったりスイングできるようです。
秋の夜長、落ち着きながらいい気分になりたい時に、
ぴったりの演奏です。
1961年7月、NYでの録音。
Wynton Kelly(p)
Paul Chambers(b)
Sam Jones(b)
Jimmy Cobb(ds)
①Come Rain Or Come Shine
アルバム全体のリラックス・ムードをよく示した演奏。
イントロのケリーの弾みつつ、軽く流したような音を聴くだけで、
「ああ、いい雰囲気で演奏が進んだろうな」と分かります。
おなじみのスタンダードをケリーは
非常にストレートに弾いています。
その中に、彼独特のスタッカートによるクリアな響きが入ることで
演奏が一気に躍動的に。
ソロに入ってからもこの傾向は変わらずで、
コブによる装飾の少ない安定したリズムの上を、
ケリーのピアノが跳ねまわるように進みます。
ケリーの牽引力が窺える内容です。
②Make The Man Love Me
これは「拾いものだ!」と膝を打ちたくなるようなバラッド。
ケリーのオリジナルです。
非常にしっとりとした曲で、
歌詞がついていないのかな?と思わせる美しさです。
ケリーのバラッドで、強い印象を与える演奏を
私はあまり知りません。
しかし、この曲では彼のクリアな音と、
抑えられたタッチが見事に融合しています。
ソロで少しだけテンポが増しますが、
これも「抑えきれない表現がギリギリのところで現れた」
と思うと、非常に愛らしい。
こういうことがあるから「聴き直し」はやめられませんね。
③Autumn Leaves
ご存知、「枯葉」です。
ちなみに、このアルバムの正式タイトルは
シンプルに「Wynton Kelly」。
「枯葉」というのは邦題です。
「枯葉」好きの日本人向けタイトルなのでしょうが、
この演奏もなかなか見事で、
レコード会社の担当者の気持ちも分かります。
こちらもメロディはストレートに提示されますが、
ケリーのような快活なピアニストが
愁いを含んで表現しているところが良い。
ピアノ・ソロは、非常に「自然体」です。
またもやジミー・コブの刻むリズムがシンプルで、
ケリーは気分が乗るまま、フレーズを編んでいます。
「普通」のジャズがこんなに輝いていた時代があったんだ、
と思わせる演奏です。
床屋を出た私、今度は食材の買い出しに
スーパーに向かいました。
すると、入口に「年賀状印刷受付中!」という
のぼりが立っているではありませんか。
ここでも年末を意識させられてしまいました。
私が東京で一番好きなのが秋という季節なのですが、
もう少しペースダウンできないものでしょうかね・・・
