バード・イン・パリVol.1/ドナルド・バード | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。


最近、「浮いているな」と感じることがあります。


そんな違和感を覚えるのは、朝の通勤電車の中。

私は、毎朝、駅で新聞を購入して、

通勤途中に目を通すようにしています。

混雑の中、新聞を折りたたんで読むわけですが、

その行為自体が「浮いている」のです。


かつて、通勤電車内は、新聞を読むサラリーマンで

あふれていました。

それが、最近は少数派になっています。

理由は簡単。

多くの人が携帯端末でニュースを見ています。

狭い車内で新聞を広げる必要がありませんし、

新聞を購入するより金銭的な負担も少なくて済みます。

速報だって入るのですから、

少しでも早く情報を入手したい人にとっては

ネットの方が重宝するのでしょう。


時代の流れがネットに傾くのはやむを得ないのでしょうが、

「新聞が買われなくなる」事態が進んで大丈夫かな?

と思うのは私だけでしょうか。

新聞はいま、部数だけでなく、広告収入も減り続けています。

収入減が影響しているのか、持った時の厚みがなくなり、

記事の内容もレベルが下がっているように思えます。

これでは、日本のメディアの質がますます劣化してしまいます。


確かに、ネットにはニュースがあふれています。

しかし、その情報にしたところで、新聞社や通信社から

配信されているものに過ぎません。

情報を発信する主体が弱くなってしまったら、

人手と時間をかけて真実を追求するというメディアの

役割はますます衰えていきます。

ネット時代の「情報はタダ」という感覚は、

やがて大きな代償を払うことになるでしょう。

そのことを見逃してはいけないと思います。


一昔前、町中でよく見られた「新聞を広げる人たち」。

そんな姿がジャケットになっているのが、

ドナルド・バード(tp)の「バード・イン・パリVol.1」。

バードが読んでいるのはフランスの日刊紙「ル・フィガロ」です。

パリを訪れた1958年当時、

バードがフランス語を解することができたのか分かりません。

しかし、「海外で新聞をめくる」ことが、

その国を知る第一歩だったことが伝わってくる

ジャケットです。


このアルバムが録音されたのは1958年。

バードがブルーノートから力作を連打する

直前の姿をとらえたライブ盤です。

バードはまだ25歳でしたが、

既にリーダーとしてバンドを見事にまとめています。


1958年10月22日、パリのオランピア劇場でのライブ録音。


Donald Byrd(tp)

Bobby Jaspar(ts,fl)

Walter Davis Jr.(p)

Doug Watkins(b)

Art Taylor(ds)


②Paul's Pal

ソニー・ロリンズ(ts)が作曲したナンバー。

個人的に気に入っている演奏です。

12分にも及ぶ長い演奏なのですが、

バンドがリラックスしているのが良く分かります。

スロー・テンポのメロディを受けて、

ボビー・ジャスパー(ts)がソロを取ります。

この人、こんなに男性的な音色だったっけ?

と思うほど、堂々としたソロ。

ゆったりと、円熟さえ感じさせる演奏です。

続いてはバードのソロ。

こちらも余裕の表情で伸び伸びと

ロング・トーンを吹いていきます。

パリという街が影響しているのか、

若手で固めた編成のためなのか、

解放感にあふれた音色がまぶしい感じです。

ウォルター・デイビスJr.も好調ですし、

太い響きのベース、無駄のないドラムも

聴きものとなっています。


③Flute Blues

これはジャスパーのフルートをフューチャーしたナンバー。

ジャスパー自身が作曲しました。

アルバムの中に「思わぬ拾いもの」とも言える

佳曲が入っていることがあります。

これはその典型とも言える演奏で、

軽妙でスイスイと進むジャスパーの名人芸を

堪能することができます。


⑤Blues Walk

クリフォード・ブラウン(tp)作曲のナンバー。

今度は急速調での演奏です。

バードの力強いヒットから始まり、

バンドは猛ダッシュ。

メロディからソロになだれ込んだバードは、

息つく間もないように、次々と短いフレーズを連打します。

勢いがついたところで、ジャスパーのソロへ。

このスピードはジャスパーにはちょっときつい(?)感じがしますが、

トランペットがバックをつけるおなじみのアレンジで

盛り上がりは増していきます。

特筆すべきはダグ・ワトキンスのウォーキング・ベース・ソロ。

これだけ速いスピードで渡されるのはしんどいと思うのですが、

見事なグルーブで切り抜けています。

トランペットとドラムの小節交換も熱気を帯びていて

素晴らしい。


これから大変な時代を進んでいくであろう新聞。

どうやったら存在感を示していけるのか、

答えを出すのはなかなか難しいものがあります。

その方向性が見えるまで、ささやかな抵抗ながら、

私は新聞を買い続けます。

アナログ人間ということもあるのですが・・・