フォー・マイ・ファーザー/ハンク・ジョーンズ | スロウ・ボートのジャズ日誌

スロウ・ボートのジャズ日誌

ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。


ジャズ界にとって、非常に悲しいニュースが

入ってきてしまいました。

ピアニスト、ハンク・ジョーンズが

16日に亡くなったのです。91歳でした。


ハンク・ジョーンズは「ジャズの生き字引」と言える人でした。

1940年代からリーダー作を発表、

チャーリー・パーカー(as)、マイルス・デイヴィス(tp)を初めとする

多くのプレイヤーから厚い信頼を得ていたのです。

日本では「グレイト・ジャズ・トリオ」の活躍で知られ、

多くの名作を残しました

http://ameblo.jp/slowboat/entry-10243315711.html

http://ameblo.jp/slowboat/entry-10160910653.html


私は2008年の「東京JAZZ」の映像を見て、

彼のプレイが非常にしっかりしているのに驚き、

「まだまだやってくれそうだ!」と期待していました。

急な訃報に接し、彼のライブを聴けなくなったことが

残念でなりません。


ハンクを追悼するにあたって、

どの作品を取り上げるべきか、大いに迷うところです。

彼が残した作品はいずれもレベルが高く、

比較するのが難しいからです。


悩んだ末、選んだのが「フォー・マイ・ファーザー」。

優雅で流麗な彼のタッチが

晩年も健在だったことを示す一枚です。

長年、現役を続けてきた巨匠に敬意を込めて・・・


2004年1月30、31日と2月1日、NYでの録音。


Hank Jones(p)

George Mraz(b)

Dennis Mackrel(ds)


①Pauletta

ドラマーのアル・フォスターが作曲したナンバー。

ボサノヴァのリズムでリラックスした雰囲気の中、

非常に優しいピアノが入ってきます。

ハンク自身が可憐なメロディを気に入っていたそうで、

メロディ~ソロへと至るピアノの一音一音が

大切に弾かれているのが分かります。

ピアニストが音を「慈しんでいる」という感じでしょうか。

こんな風に弾いてもらえたピアノも幸せですね。


④Sophisticated Lady

有名なエリントン・ナンバー。

ここではイントロがなかなかの聴きもの。

弓で弾かれたベースの重い響きに乗って、

ハンクがメロディとも断片ともつかぬ、

静かなイントロを奏でます。

そのイントロがふっと途切れ、

緊張感が緩んだ時に、

ピアノ・ソロによる美しいメロディが入ってきます。

ここでリズム陣は一休み。

と言ってもダラっとしているのではなく、

リーダーのハンクの動きをじっと

窺っているのが分かります。

再びリズム陣が加わると、

今度はメロディの展開などに合わせ、

素早くテンポを変えるなど、

凝ったアレンジが披露されます。

しかし、それが全く鼻につかないのです。

難しいことを平易に聴こえるようにやってしまう

名人芸があります。


⑫Softly As In A Morning Sunrise

「朝日のようにさわやかに」という邦題で知られる

スタンダード・ナンバー。

この曲もイントロからメロディへの流れが鮮やかです。

メロディではブラシが非常にいい味付けになっていて、

テンポがそれほどスローではないのに、

非常に落ち着いて曲を味わうことができます。

快調なブラシに乗ってピアノ・ソロもスイスイと進む。

ハンクの手から紡ぎだされるフレーズは

バップの伝統を受け継ぎつつも、

アイディアが実に豊富で感心させられるばかり。

生涯、研究を続けたのでしょうね。

ベース~ドラムのソロも落ち着いた

「大人の味わい」があります。


改めてジャケット写真を眺めると、

良い写真なのですが、

その穏やかな表情が

遺影のようにも見えてしまいます。

謹んでご冥福をお祈りします。