突然ではありますが・・・・
人間というのは愚かなものです。
やってはいけないこと、
経済的には無駄になってしまうと分かっていることでも
ついつい手を出してしまうのです。
私の場合の「経済的に無駄なこと」とは・・・「LP買い」です。
ここまで書くと、熱心なジャズファンはピンとくるでしょう。
そう、まだ聴いたことのないLPを買うわけではありません。
既にCDで持っている作品を、あえてLPで買ってしまうのです。
なぜそんなことをするのか?
もちろん、「音」と「ジャケット」です。
LPならではの柔らかみのある音は
聴くたびに「違うなあ」としみじみしてしまいます。
ジャズのように、「音の個性」を競う音楽では、
デジタルのカチカチした響きでは
割り切れないものがあるのです。
そして、ジャケット。
CDと比べ、圧倒的な迫力で迫ってくる
ミュージシャンの表情は飽きることがありません。
それが芸術的なデザインなら、尚更です。
休日、私はまた「(もうあるのに)LP買い」を
やってしまいました。
シェリー・マンの「234」。
ジャケットは煙草を吸っているシェリー・マンのアップ。
煙草の灰が落ちそうなのに、
そんなことは全く気にせず、何か先を見据えている表情。
LPの「エサ箱」をあさっていて、こんな表情に出会ってしまったら
買わざるを得ないでしょう。
しかも、日本盤の中古ゆえに値段は630エン(!)。
オリジナル盤に手が届かないサラリーマンには
これで十分です。
聴いてみると、もともと見事な録音だったこともあり、
素晴らしい音を堪能できました。
マンの切れ味がいいのに柔らかみがあるドラムが
心に沁み込んできます。
「無駄を承知で買ってよかった!」と一人納得したのでした・・・
ちなみに、この作品のタイトル「234」は、
曲によって異なる編成を表しています。
「2」はマンとコールマン・ホーキンス(ts)のデュオ、
「3」はマンとエディ・コスタ(p,vib)、ジョージ・デュビビエ(b)とのトリオ、
「4」はマン、ホーキンス、デュビビエ、ハンク・ジョーンズ(p)による
カルテットとなっています。
それぞれの編成による演奏の変化も聴きどころの一つです。
1962年2月5日、8日の録音。
①Take The "A" Train
有名曲「A列車で行こう」。
カルテット「4」による演奏です。
イントロ部分でのよく響くシンバルと、攻撃的なピアノ、
そして重厚なベース。
それぞれの楽器の「鳴り具合」から、尋常ではない演奏が
始まることが分かります。
しかも、このイントロでは、ドラムの設定したテンポよりも
ピアノがはるかに速く演奏しているのです。
絶対に合わないはずのものが融合してしまう面白さ。
さすが名手たちです。
スロー・テンポによるメロディでは、マンの技が光ります。
決まり切ったビートを刻むのではなく、
微妙にスピードを変えたり、ブレイクをはさむのです。
これも、ついていく他のミュージシャンにしたら大変でしょうが、
演奏に緊張感が生まれ、片時も耳を離せなくなります。
コールマン・ホーキンスが加わってからは快調な
ミディアム・テンポに。
ここではぐっとリラックスして列車の旅を楽しむことができます。
⑤Cherokee
このマンはすごい!
冒頭のブラッシュ・ワークはジャズ・ドラムの歴史に
残るものでしょう。
単に速いだけでなく、「気もちいい」のです。
圧迫感すらあるスピードなのに、音楽として聴けてしまう。
ハートがあるんだなあと思います。
これもカルテット「4」の演奏。
面白いのは、ホーキンスのテナーが入ってくると
リズム陣のスピードが落ちることです。
それも急激にではなく、ゆっくりと。
単純なリズム・パターンの変更は、ある程度の力量がある
ミュージシャンならお手の物でしょう。
しかし、「ゆったり」スピードを落としていくのは難しいはずで、
彼らのタイム感覚に脱帽です。
テナー・ソロの後に入るマンのソロも必聴もの。
ブラシが自在に歌い、盛り上げる。
この優しい感じはLPの音でなければ・・・・
フェード・アウトで終わらなければ、もっと良かったのですが。
⑥Me And Some Drums
これはマンとホーキンスによる「2」の演奏。
何でも、他のミュージシャンが帰ってしまった後、
真夜中のスタジオでマンとホーキンスが
即興で演奏してしまったものだとか。
最初、ピアノを弾いているのはホーキンス(!)。
実際にどこまで弾ける人だったのかは分かりませんが、
重みのある不思議なメロディ(?)を奏でています。
マンは民族音楽にも聴こえるような、タムを多用した
トコトコ・リズムでバックアップします。
その後、ホーキンスがテナーを持ち、
ドラムとのデュオに突入。
二人でフリーのインプロビゼーションが続きます。
マンがシンバルを多用し出してからは
次第にテンポが上がり、緊張感のある展開へ。
ホーキンスがメロディの断片ともとれるフレーズを吹きだすと、
マンはテンポを落とし、再びトコトコ・リズムに転じて
演奏は終息に向かいます。
このあたりの息の合い具合からも、
お互いへの尊敬が伝わってきます。
LPの響きにすっかり満足した私。
しかし、LPを収納する段階になると、
ちょっとブルーになります。
棚からあふれだそうとしている作品たち・・・・
転勤が多く、借家住まいを余儀なくされる中で、
スペースを取るLPをどう収納するかは大きな問題です。
いつかはLPをたくさん収納できて、
大きい音を出しても近所に迷惑がかからない、
広い家に住みたいなあ・・・・
