ブルー・スカイズ/スタン・ゲッツ | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。


3月3日の雛祭りが終わり、

いよいよ春という時季になりました。

しかし、このところぐずついた天気が続いていることもあって、

解放的な気分には至っていないという方も多いのではないでしょうか?


こんな時にぴったりのジャズがあったはず、

と思ってCD棚に向かったら、ありました。

スタン・ゲッツ(ts)の「ブルー・スカイズ」。

1982年1月の吹き込みです。


ゲッツは1950年代から活躍し、

若くして代表作を次々に発表しました。

そのため、晩年の作品はあまり注目されないのですが、

1991年に亡くなる直前まで、素晴らしいプレイをしています。

「息の長い天才」という意味では、ジャズ界でも数少ない存在の

一人でしょう。


「ブルー・スカイズ」の一曲目は「スプリング・イズ・ヒア」。

普通、一曲目は快活な曲が収録されますが、

ゲッツはいきなりスロー・バラッドで始めています。

そのゆったりとした悲しい調べは、

まだ春になりきっていない、期待と憂鬱さが入り混じる

この時季によく似合います。


Stan Getz(ts)

Jim McNeely(p)

Marc Johnson(b)

Billy Hart(ds)


①Spring Is Here

ロジャース&ハート作曲の有名スタンダード。

最初からゲッツ独特のリリカルな音色が光るプレイです。

50年代当時と比べると、少し枯れた味わいが入り、

透明感が増しているような気がします。

素晴らしいのは集中力が衰えないこと。

メロディはスローなテンポで一貫しており、

少し気を抜けばアラが見えるところですが、

一音一音に全くスキがありません。

ソロに入ると、少しずつエネルギーを増していき、

徐々に盛り上げていく・・・・かと思うのですが、

再びテンポを抑え、バラッドに徹します。

このあたりの、安易に流れに任せないところがニクイ。

バックのリズム陣も非常にストイックで、

着かず離れず、ゲッツをバックアップ。

非常に落ち着いて聴ける、大人のバラッドです。


今回、調べてみて分かったのですが、

「スプリング・イズ・ヒア」は「春の孤独」を歌っているのですね。

おおざっぱな歌詞の意味は・・・


春が来たけど私の心は弾まない

なぜなら誰も私のことを愛していないから・・・


うーん、悲しいですね。

しかし、この歌詞の内容を知ってしまうと、

ゲッツの切ない演奏の意味するところもよく分かります。

長い冬が抜けて、気分を高揚させたい時に孤独だったら、

寂しさが増しますよね。

録音が行われたのは1月ですから、ゲッツの気分も

「限りなく冬に近い春」だったのでしょうか。


この「スプリング・イズ・ヒア」の雰囲気がアルバム全編を覆っていて、

③Easy Living でも、しっとりした素晴らしいスロー・バラッドを

聴くことができます。


東京はしばらく雨が続くそうですが、

そこを越えれば、一気に春が来るのではないかと期待しています。

そうしたらお花見にも合いそうな「春らしい」ジャズを

ご紹介できるのではないかと思います。