オールド・カントリー/ナット・アダレイ | スロウ・ボートのジャズ日誌

スロウ・ボートのジャズ日誌

ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。


天皇誕生日の23日。

クリスマス・イブの前日ではありますが、

多くの日本人にとっては

この祝日が実質的な「クリスマス」であることでしょう。

私はきょう、渋谷の街を通ってきたのですが、

駅前はものすごい人で埋め尽くされていました。


残念ながら私は仕事を抱えており、

この「聖夜」もたった一人で過ごすことに

なってしまいました。

何か割り切れない気分を抱えつつ家路に就いたのですが、

途中で普通に帰るのがもったいなくなってきました。

そこで、前から存在は知っていたのですが、

何となく入りにくかった中華料理屋へ寄ってみることに。


狭い間口の店は、中も小さく、席は16しかありませんでした。

ちょっと気が引けたのですが、

非常に気さくなおかみさんが迎えてくれました。

この方、中国人で、独特のイントネーションがある日本語を使い、

いろいろと話しかけてくれます。

出身地はどこ?会社は?これまでどんな仕事をしてきたの?

かなりプライベートに関わる話題が多かったのですが、

おかみさんの飾らない人柄に触れて、

こちらも正直に答えてしまいます。

ご主人も中国人で、おかみさんよりは口数が少ないのですが

とてもフレンドリー。

二人でフラッと現れた客を快く迎えてくれたのでした。


料理もとてもおいしく、特に「青菜の水餃子」が良かった!

店を出るとき、やるせない気分は和らいでいました。

こういう「望外の楽しいこと」に出会うと

幸せを感じますよね。


ジャズでも「予想以上に良かった」作品に出会うことがあります。

ナット・アダレイ(cor)の「オールド・カントリー」。

私にとって、いい意味で「予想を裏切る」作品でした。


このアルバム、「日本制作盤」です。

日本人プロデュース盤には、商業的な成功をねらって

「ヤワな」曲目と音作りをする作品が多い。

ところが、この作品は実に硬派。

おそらく、リーダーよりも遠慮なくブロウする(?)

ビンセント・ハーリング(as)の参加が大きいのでしょうが、

90年代にあって実にまっとうなハード・バップが

展開されています。

その力強さ、潔さを堪能したい快作です。


1990年12月5~6日、NYでの録音。


Nat Adderley(cor)

Vincent Herring(as)

Rob Bargad(p)

James Genus(b)

Billy Drummond(ds)


①The Old Country

ナット・アダレイの代表作と言っていい一曲。

キース・ジャレット(p)が取り上げたことでも有名です。

自らの曲をどう料理するのかなと思ったら、

ナットは実にストレートにメロディを吹いています。

59歳になっていた彼の音色には

「かすれ」が多くなり、哀感がある曲を

より陰影が深いものにしています。

しかし、この後ハーリングが加わることで、

一気に演奏は「熱い」方向へ。

泥臭いまでに割れるような音を響かせ、

激しいブロウを繰り広げます。

彼に影響されて、続くナットのソロは一転して熱くなり、

高音のヒットを多用する展開に。

まあ、年のせいか、ずっとは続きませんが・・・・

全体的にファンキー・ジャズの

正しい香りを漂わせた快演となっています。


③Jeannine

ピアニスト、デューク・ピアソンの曲。

モード感覚が入った曲を、見事なアレンジで料理しています。

ホーン陣がアクセントをつける中、ロブ・バーガッドが

流れるようなソロを取っていきます。

こうした曲では「クセが強すぎず、流れるような」ソロが

似合いますが、そのお手本のような演奏。

続くナットは、決してこういう曲が得意ではないはずですが、

自分のハード・バップ的な節回しとモード感覚を

うまく融合させて聴きごたえのあるソロを取っています。

ハーリングは相変わらず、

自分の情熱をぶつけるかのような熱いソロ。

時に、ナットの兄、キャノンボール・アダレイを思わせる

超絶技巧と情熱を併せ持ったフレーズが聴けます。


⑦Stella By Starlight

ナットのミュート・プレイが好ましいバラッド。

そろそろと歌いあげるメロディ部分がよく、

少しマイルスを思わせますが、

あそこまで省エネ(?)に徹していないところが良い。

時にこらえきれず、メロディを歌いあげてしまうところが

ナットのいいところ。

ハーリングはこういう曲でも情熱を抑えることができず、

「おいおい、コルトレーンだってもっと遠慮していたぞ」と

言いたくなるのですが、

こういう向う見ずな若さもたまにはいいものです。


もうすぐ、日付が変わり、

本当のクリスマス・イブとなります。

みなさんはどんなクリスマスをお過ごしですか?

どうか温かい気持ちを持てる一日でありますように。