バリー・ハリス・イン・スペイン | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。


皆さんはどんな年末をお過ごしでしょうか?

私は28日(月)まで仕事ですが、

その後は年末年始の休暇に入ります。

これって、私としては実に珍しいことで、

例年ですと大晦日まで平気で仕事が

入っていたりするのです。

久しぶりに「ゴールが見える」年末となっています。


少し落ち着きのある年末の夜に何を聴くか。

取り出したのはバリー・ハリス(p)の

「バリー・ハリス・イン・スペイン」です。

なぜこの作品なのかというと、

全ての曲に、独特の「重さ」があるからです。


バリー・ハリスはよく知られているように、

バド・パウエルの流れを受けている

モダン・ジャズの名手。

「いぶし銀」的な渋さがありつつ、

明確なスイングをする人です。

それが、この作品では「明確さ」が影を潜めている。

その代わり、全体をやや重めのムードが覆い、

音数も少ない。


しかし、聴いて寒々とする「暗さ」ではないのです。

むしろ、重厚なリズムに乗って響いてくるピアノには

不思議な安心感があります。

この「分かりやすいのか分かりにくいのか」

判然としないピアノは、

落ち着いて1年を振り返るときにぴったりだと思うのです。

1年を終えるとき、単純に「良かった・悪かった」と

白黒をつけられる人はそういないでしょう。

そんな複雑な気分がそのまま音で

表現されているようなところに

このアルバムの魅力を感じます。


1991年12月5日、マドリードでの録音。


Barry Harris(p)

Chuck Israels(b)

Leroy Williams(ds)


①Sweet Pia

ハリスのオリジナル曲。

このアルバムの雰囲気を象徴している一曲です。

ドラムの一撃とベースの重厚なイントロに導かれ、

ハリスのピアノが入ってきます。

非常に渋く、重いメロディ。

ソロに入っても渋さは変わらず、

やや愁いを帯びているようにも聴こえる

音色が続きます。

ソロの途中でタッチがやや強くなる局面がありますが、

基本的には過剰さが全くない、淡々とした演奏。

後半のピアノ~ベース~ドラムの小節交換も

職人同士の無口な会話のよう。

しかし、そこに何とも言えない深みがあります。

スルメ的な「噛めば噛むほど味わいが増す」

タイプのトラックと言えるでしょう。

そういえば、ここまで渋いジャズ、最近ないなあ。


②A Bird In Hand

2曲目は①と比べると、ピアノのタッチがやや明るい。

同じくハリスの曲ですが、淡々としながらも

こちらの方がより温もりのある演奏になっています。

優しいメロディを受けて、ハリスのソロは

とつとつと、静かに語りかけてくる。

決して大げさなことは言わないけれど、

真意はきっちりつかんでいる、

そんな友人に出会った感じがする一曲です。


何だか、久しぶりに人生の先輩から

「デジタル思考では割り切れないものがある」と

教えてもらったような気分です。

今年も残すところあとわずか。

この1年にあったことを反芻してみて、

新しい年に備えることとしますか。