いま、私の会社に多くの若者が押しかけています。
理由は簡単で、採用面接を受けに来ているのです。
初々しい若者が、ぴったりとしたリクルートスーツを着ているので、
すぐにそれと分かってしまいます。
私の上司が面接官をしているのですが、
彼らの言葉によると、優秀なのは圧倒的に女性だそうです。
目的意識がしっかりしていて、弁も立つとのこと。
そういえば、自分が入社した頃も女性の方が優秀だったけど、
当時はバブル期でスイスイ入社できたから、危機感は薄かった・・・。
いまの若き男子学生の皆さんは油断していると
女性に枠を奪われてしまうかもしれない。大変ですね。
もう一つ、採用がらみで気になる話がありました。
私の会社で「総務の仕事がしたい」という希望を持つ
学生が増えているそうです。
これは驚きでした。
私の会社では、これまで「企画」などを行う部署が花形でした。
クリエイティブな側面もありますが、その分結果が求められ、
肉体的にも精神的にもきつい仕事です。
それでも「やりがいがある」ということで人気だったのですが、
いまは希望者が減っているというのです。
こうした傾向の背景を勝手に決めつけるのは危険ですが、
やはり「時代」なのかな、とも思います。
いまの20代初めの人たちが生まれたときと言えば
1980年代の半ばを過ぎています。
物心がついた時には、バブルも終わっていますし、
もちろん高度経済成長なんて歴史上のこと。
「失われた10年」の中で成長し、
グローバリズムの高揚と拝金主義の盛り上がり、
そして、その負の遺産としての金融危機をずっと見てきたわけです。
こうなると、「社会がどんどん良くなっていく」という幻想は持てませんし、
「そこそこやっていこう」という価値観が出てきても不思議ではありません。
人生にドラマを求めにくい時代なのかもしれませんね。
若者の間で「家でのデート」が流行っている、なんていうのも
そうした価値観の表れかもしれません。
いまや40代のおじさんが若い頃、
それは「デート」とは呼べませんでしたが・・・・
いや、話が脱線しました。
若者もこの時代に目標を見つけにくいでしょうし、
採用する方も若者の適性を見極めるのが難しいかもしれません。
でも、採用する側の確かな目と、採用される側の意欲が結びつけば、
幸せな結果が生まれるはず。
組織にいると人材の貴重さというものが良く分かりますから、
この春にもいい出会いがあることを祈ります。
さて、ジャズの世界で「人を見る確かな目」を持っていたのが
ドラマーのアート・ブレイキー。
1940年代から活躍し、90年に亡くなるまで第一線にいた
ジャズ界の巨人です。
この人、長らく「ジャズ・メッセンジャーズ」という
グループを率いていました。
固定メンバーはリーダーのブレイキーだけ。
後は若いメンバーが出たり入ったりしていたのです。
この中から、入団当時は無名だったのに、
後にジャズ・ジャイアントとなるミュージシャンが多数出てきました。
ブレイキーは若者のライブ演奏を聴いて、
「こいつはいける!」と思ったらスカウトしていたそうです。
若者はそれと意識していないうちに「採用試験」を
受けてしまった、ということでしょうか。
ジャズ・メッセンジャーズには多くの名盤がありますが、
若手の加入がブレイキーのスタイルにも影響し、
それまでにないサウンドを生んだのが、
「スリー・ブラインド・マイス」です。
1962年3月、ハリウッドでのライブ録音。
ホーンを担当する3人は既にリーダー作を吹き込んでいましたが
まだ「有望な若手」の位置づけ。
ピアノのシダー・ウォルトンはまだ無名だったはずです。
Freddie Hubbard(tp)
Curtis Fuller(tb)
Wayne Shorter(ts)
Cedar Walton(p)
Jymie Merritt(b)
Art Blakey(ds)
①Three Blind Mice
トロンボーンのカーティス・フラーが作曲したナンバー。
これを聴くと、若手がバンドサウンドを変えたことが良く分かります。
50年代後半のジャズ・メッセンジャーズは「ファンキー路線」という、
ブルージーで乗りのいいサウンドを追求していました。
ところが、テナーのウェイン・ショーターが音楽監督を務めるようになって、
「モード奏法」という自由度が高い演奏法が取り入れられたのです。
まあ、音楽理論はどうでもいいでしょう。
とにかくサウンドがフレッシュなものに変わったのです。
これは「上司」であるブレイキーが自分のスタイルにこだわっていたら
できなかったことです。
イントロはベースのソロから始まります。
ピアノとドラムが加わり、
やがて3管が入るという展開を聴くだけでワクワクします。
3管が生み出す厚みのあるアンサンブルと、
勢いのあるドラムの組み合わせが何とも心地よい。
最初のソロはショーター。
彼はモード的な、スペースをうまく使った流れを作り、
そこにユーモアを織り交ぜてもいます。
メロディとショーターの勢いに押されてか、
カーティス・フラーによるトロンボーン・ソロは
自己のバンドの時より明らかに軽快です。
続くフレディ・ハバードによるトランペットは
若々しさと力強さにあふれ、切れ味の鋭さにもハッとさせられます。
シダー・ウォルトンは賢い彼らしく、
完全に新しいバンドサウンドを消化したソロをとります。
同じようなフレーズを転がしていくうちに
見事なソロにしてしまう手腕は大したもの。
今でも古さを失わない、斬新な演奏です。
②Blue Moon
フレディ・ハバードの素晴らしいバラッド・プレイが聴けます。
この演奏を評する言葉は不要でしょう。
ただ、テナーとトロンボーンがさりげなくつけている
バックにもぜひご注目を。
このアレンジによって、演奏のランクが一つ上がっているのは
間違いありません。
これも「若手の勝利」です。
⑤Up Jumped Spring
フレディ・ハバードのペンによるこの曲、私は大好きです。
非常に楽しいワルツで、メロディだけでも素晴らしいのに、
小粋なホーン・アレンジで更に「聴かせる」ナンバーとなりました。
ミュートを使って早口で話しかけてくるようなハバードのソロ。
逆に音数は少なめに、ぐるぐる回るかのような不思議なフレーズで
迫ってくるショーター。
ここでもスピード感があるフラー。
そして、タッチは派手ではないながら、徐々に盛り上げ、
見事にメロディに渡すシダー。
聴くと元気が出てくる演奏です。
就職活動に疲れた若者にも、ぜひ。
改めて聴くと、親分のブレイキーと若者とのコラボレーションが
非常にいいですねえ。
ブレイキーのもとから巣立ったミュージシャンのインタビューを
いくつか読んだことがあります。
正直、お金の支払いについてはいま一つだったそうですが、
「音楽面では成長させてもらった」と、皆が口をそろえていました。
就職を目指す若者の皆さんにも良き親分との出会いがあるといいですね。
職を得ても、最初は精神的にも金銭的にも大変でしょうが、
乗り越えるといいことが待っています。
温かい目で見ているおじさんもいることを忘れずに。
