ペッキン・タイム/ハンク・モブレー | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

Peckin' Time


いやはや、ストレスの溜まる火曜日でした。

ブログで時々仕事上のトラブルを嘆く私ですが、

きょうもかなり理不尽な要求を上司に突きつけられ、

四苦八苦。

またこれが自分ひとりで完結する問題ならいいのですが、

部下を巻き込んでしまう類のことなので大変です。

上司と部下の間で板挟み。

典型的な中間管理職ですね。


一昔前は「おじさんって、何であんなに疲れているんだろう」

と思っていました。

デスクワークが多く、会社でだらだらしているのに、

妙に元気がない。

しかし、自分も彼らの年齢に近くなって分かってきました。

本当に「疲れる」んですね。

それも、肉体的にではなく精神的に。


会社内での人間関係にまつわるトラブルに巻き込まれると、

何の病気もしていないはずなのに、お腹が痛くなってきます。

かつては、そんなことはありませんでした。

たぶん、以前は外回りの仕事もあり、

会社から解放される気分も味わえたことから、

精神的にあまり追い詰められていなかったのだと思います。

それが、今の仕事は会社の中だけ。

狭いオフィスだけが「世界」になってしまい、

そこで生まれるストレスから逃げられない。

行き場のないストレスが体調にまで影響してしまうようです。


仕事で疲れたときに聴くジャズをこれまでいくつか挙げてきました。

http://ameblo.jp/slowboat/entry-10232136688.html

http://ameblo.jp/slowboat/entry-10204758062.html

http://ameblo.jp/slowboat/entry-10143075485.html

http://ameblo.jp/slowboat/entry-10141010819.html


マイルス・デイヴィス、グラント・グリーン、トゥーツ・シールマンス、

ソニー・クリス・・・・

ずいぶん色々なミュージシャンに力をつけてもらったなあと思うのですが、

きょうはまた新たな人が登場です。

テナー・サックスのハンク・モブレー。


以前にも書きましたが、モブレーはド迫力で他のメンバーを

支配してしまうような人ではありません。

http://ameblo.jp/slowboat/entry-10157545010.html


テナーという楽器を扱いながら、

どこかまろやかな、スムーズなフレーズが彼の特徴です。

その音を聴くと、「優しい人っているんだな」と安心できます。


そんなモブレーが、俊英トランペッターであるリー・モーガンと

フロントを構え、吹き込んだのが「ペッキン・タイム」。

面白いのは、当時27歳のモブレーが、

若干19歳のモーガンに押されているところです。

生意気さに任せ、バリバリ吹いてくるモーガン。

対するモブレーはいつものペースでちょっと優しい表情。

あれれ、どっちが主役なの?

ひょっとしてバックのメンバーも「誰のリーダー作なんだよ・・・」

ぐらい思っていたんじゃ?


モブレーは有望な後輩とバックメンバーの間で「板挟み」になり、

ストレスを抱えたのではないかと邪推してしまいます。

が、通して聴いてみると、モブレーは鷹揚に受け止め、

演奏を楽しんでいるようです。大人ですね。


1958年2月の録音。


Hank Mobley(ts)

Lee Morgan(tp)

Wynton Kelly(p)

Paul Chambers(b)

Charlie Persip(ds)


①High And Flighty

モブレーが作曲したナンバー。

いかにもハードバップらしい、ノリがよい上に

メロディックでもある曲です。

最初のソロはモブレー。

中低音の多い、彼らしい流れるようなソロです。

音色は「バリバリ」とは言えないし、白人的な軽さもない。

やはり彼は「テナーのミドル級チャンピオン」なのでしょう。

この後に登場するモーガンは飛ばします!

最初の一音からして、モブレーのソロとかぶっていて、

割り込むように入ってくる。

急速フレーズが連発されながらも、全く破たんがない。

この大胆さ、堂々とした態度は新人離れしています。

続くウィントン・ケリーは、モーガンの影響か、

前のめり気味なソロで駆け抜けます。


②Speak Low

このアルバムで最も印象の強いナンバーではないでしょうか。

軽快なリズムに乗ってメロディを朗々と吹くモーガン。

この音色は輝かしい、という他ありません。

その後、モブレーもメロディに参加しますが、

ここから急にトーンが落ち着いてきます(笑)。

そのままソロに突入して、やや遅めのテンポで

さらりと流していくモブレー。

B級の演奏かもしれませんが、親近感が湧いてきて私は好きです。

ケリーのピアノをはさんでモーガンが登場。

テクニックをひけらかすのではなく、余裕で構えた、といったプレイ。

この辺りはモブレーの大人の態度に影響された?のでしょうか。


後輩の強烈な個性を目の当たりにしても

自分の道をゆくモブレー。

それしかなかったと言えばそれまでですが、

この「マイペースさ」こそ大事なのだと思います。

私も組織の中にいてペースを乱されそうになりますが、

最後はモブレーのようにゆったり構えて進んでいければな、と思います。