ヘレン・メリル・ウィズ・ストリングス | スロウ・ボートのジャズ日誌

スロウ・ボートのジャズ日誌

ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

Helen Merrill with Strings


しばらくお休みしていたこのブログ、

ようやく再開することになりました。

更新していなかった間もペタやメッセージをくださった皆さん、

本当にありがとうございました。

こんなブログを楽しみにしてくださる方々がいることを改めて実感し、

励みになりました。

今年も宜しくお願いいたします。


新年を迎えてから、しばらく札幌に帰省していました。

親戚や友人、かつての職場の仲間たちと酒を酌み交わす日々。

そうした中、どうしても行かなければならないのが「スローボート」。

ジャズ・ピアニスト、福居良さんのライブハウスです。


私が訪れたのは22時過ぎで、ちょうど第2セットが始まるところでした。

この日のメンバーは福居さん(p)、粟谷巧さん(b)、舘山健二さん(ds)。

急速調の曲が多いセットで、福居さんの熱いビ・バップはもちろん、

年男で24歳になるという粟谷さんのスピード感あふれるプレイ、

舘山さんのブラシを多く取り入れた柔軟性のあるドラムも満喫しました。


この中で演奏された唯一のスローナンバーが「When I Fall In Love」。

福居さんはバラード演奏が大変うまい方ですが、

この時のプレイも素晴らしいものでした。

メロディーを飾らず、ストレートに弾くことで、

この曲の持つロマンチックなムードは保ちつつ、

甘さに流されない見事なジャズになっていました。


「When I Fall In Love」の歌詞は、こんなフレーズで始まります。

「私が恋に落ちるのなら その恋は永遠であってほしい

 そうでなければ恋などしない・・・・」

絶対的な恋愛を求める、甘く、内に激しさを秘めた内容です。

それゆえに、甘過ぎる演奏だと聴いていて恥ずかしくなってくるし、

かと言って素気ない解釈だと白けるという難曲なのです。


この曲で私が思い出したのが、ヘレン・メリル(vo)。

1955年に録音された「ウィズ・ストリングス」の中で歌っています。

実は、私はこのアルバム全体は、5段階評価をするなら

3つ星半くらいかなと思っています。

メリルの歌唱は高いレベルにありますが、

リチャード・ヘイマンの編曲は今聴くとかなり古臭く、

ストリングスが過剰に感じられます。

また、曲のテンポにもバリエーションが少なく、

スローな曲ばかりで若干かったるくもあるのです。

しかし、「When I Fall In Love」については、メリルの表現力と

シンプルなアレンジが功を奏して、忘れられない名演となっています。


⑦When I Fall In Love

ここでのメリルの素晴らしを言葉にするのは大変愚かしいのですが、

あえて言うなら「甘美な歌声」と「曲に正面から向き合った勇気」

の二つから生まれた名演、となるでしょうか。

メリルのハスキーでありながら優しさをたたえた歌声。

その声でメリルはこんな一節を歌います。

“When I give my heart

It will be completely・・・・”

私はこの部分を聴いて、メリルはきっと笑顔で歌っていたんだろうな、

と想像します。

それだけ、彼女はこの歌詞の世界に正面から向き合って、

美しい恋愛を照れずに、喜びをもって歌いあげているのです。

この曲に対する正しい姿勢、だと思います。


年明け早々、経済情勢など厳しいニュースが続いているようです。

そんな中、「人との確かなつながり」を想像させる一曲を聴く、

そんな時があってもいいですよね。