オープン・セサミ/フレディ・ハバード | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

Open Sesame


ジャズ・ファンにとっては「何を今さら・・・・」という話になってしまいますが、

昨年末、トランペッターのフレディ・ハバードが亡くなりました。

70歳でした。


よく「プロデューサー泣かせ」と言われるミュージシャンがいます。

いろんなケースがありますが、クスリに弱かったり、

変わった性格だったり、演奏にムラがあったり・・・・。

ここからは私の勝手な想像ですが、

ハバードは逆で、「プロデューサーを泣かせなかった」

トランペッターだったのではないでしょうか。


ハバードは長いキャリアの中で、実に多彩な活動をしました。

1950年代後半にNYに進出し、

ハード・バップの一級奏者として頭角を現したかと思えば、

60年代半ばにはフリー・ジャズ的な作品に参加。

70年代にはCTIレーベルと契約して

アコースティックにこだわらない姿勢を見せ、

商業的な成功を収めます。

それが、VSOPでの活動を契機に再び王道的なジャズに回帰・・・・。

けっこうめまぐるしいのです。


しかし、彼はどんなスタイルでも力強く、輝かしいラッパを吹き、

常に高いレベルの演奏を残してきました。

プロデューサーから見れば、これだけ幅広さを持ち、

どんな要求にも応えられるミュージシャンは貴重だったでしょう。

長年にわたってリーダーだけでなくサイドマンとして

引っ張りダコだったのもうなづけます。


そんな彼のデビュー作が「オープン・セサミ」。

全編を聴きなおしてみて感心するのは、

若干22歳にして多様な曲を「料理し」、「消化してしまっている」

その手腕の見事さです。

急速調でのブロウ、歌心たっぷりのバラッド、哀感あふれる音色・・・・

キャリアの初めから、後の活躍が透けて見えるようです。

この作品を制作したのはブルー・ノートの名プロデューサー、

アルフレッド・ライオン。

ハバードにサイドマンとしてキャリアを積ませるより、

いきなりリーダー作を吹きこませたあたり、期待の高さが窺えます。


1960年の録音。メンバーは以下の通り。


Freddie Hubbard(tp)

Tina Brooks(ts)

McCoy Tyner(p)

Sam Jones(b)

Clifford Jarvis(ds)


①Open Sesame

テナー・サックスのティナ・ブルックスによるオリジナル曲。

「開けゴマ」を意味するタイトルから、何かゾクゾクするものを

聴く側は期待してしまいます。

それに応えるかのように、ラテンリズムにほのかな哀感が混じった

メロディーからスタート。

これで一気に引き込まれます。

続くハバードのソロは若さあふれる快調なブロウ。

眩しいばかりの「ストレートさ」で、ハイ・ノートを連発します。

しかし、リー・モーガン(tp)のような「不良っぽさ」とは違い、

時に演奏全体を計算しているかのようなクールな表情が見えます。

この辺りの「賢さ」がハバードの持ち味なのでしょう。


③Gypsy Blue

①の人気の陰に隠れてしまっていますが、

このアルバムの中で私の愛聴曲です。

同じくティナ・ブルックスが作曲しています。

①よりもぐっと「哀愁度」を高めた作品で、

メロディーがテナーとトランペットのソロの合間に

再登場するという構成もユニークです。

最初のソロはブルックス。

ブルージーなソロが曲調にぴったりはまっています。

続くハバードはコントラストをつけるかのように

まず高音をヒットさせ、終始力強いトーンを保っていきます。

この辺りのバランス感覚、若者とは思えません。


⑥Hub's Nub

ピアノの単調なリズムによるイントロから転調し、

ホーンが波打ったり、細かいフレーズを重ねたりと忙しい、

不思議なメロディーが展開します。

作曲者はハバード。

この曲からは、従来のハードバップとは違う、

「何か別の感覚」が聴こえてきます。

変な言い方ですが、「多少凸凹してもいいんだよ!」

という「開き直り感」があるのです。

トランペットソロもストレートながら、どこか思索的な

「新しい」響きがあります。


デビュー時から幅広い才能の萌芽を見せていたハバード。

その後の彼は、自分が持っていた様々な可能性をその都度

試していたのかもしれません。

多くのプロデューサーがその才能に賭けてみたくなるような

ミュージシャン、彼に続くのは誰なのでしょうか。