今年も残すところあと1日。
みなさんにとってどんな1年だったでしょうか。
私にとっては、新たな転機となった年でした。
転勤に伴う別れと出会い、新しい仕事への戸惑い、
泣きたくなるような出来事もあれば、
大笑いしたくなるようなこともありました。
40近くになるまで年齢を重ねても、
環境の変化でさらに自分が変わっていく、
変えられるということを実感した年でもありました。
私が毎年、年越しが間近になった時に聴くのが
ビル・エヴァンス(p)の「ザ・パリ・コンサート・エディション1」です。
エヴァンスについては、もう説明の必要はないでしょう。
ジャズに白人ならではの抒情性と美意識をもたらし、
ピアノの表現の幅を一気に広げた人です。
その彼が51歳で亡くなる11か月ほど前に、
パリで行ったライブを収めたのがこの作品です。
私が年末にこれを聴くのは、
エヴァンスの当時の音色が非常に澄み切っていて、
何か「悟り」にも似たものを感じさせるからです。
もう迷うことはない、力いっぱいやるだけだ・・・・・
死を目前にして、そんな決意を固めたかのように、
渾身の力を振り絞った演奏。
しかし、悲壮な内容かというとそうでもなく、
ようやく自分の理想に近い音楽にたどり着いた達成感と、
爽快さがあるのです。
エヴァンスが当時のトリオを非常に気に入って、
情熱を傾けていたということも影響しているのでしょう。
その「ためらいのなさ」「高いレベルの達成感」が
私から雑念を取り払い、
新しい年に向かう気分にさせてくれるのです。
1979年、11月の録音。
Bill Evans(p)
Marc Johnson(b)
Joe LaBarbera(ds)
全ての演奏が素晴らしいのですが、
ここでは特にアルバム全体の透明な雰囲気を象徴している
冒頭の曲をご紹介しましょう。
①I Do It For Your Love
当時、エヴァンスが気に入っていたポール・サイモンの曲です。
イントロの濁りが全くない静謐なピアノを聴くだけで、
何かただならぬものを感じます。
メロディーに入ると、その音色はいっそうクリアに。
そして、ひっそりと寄り添うようなベースとブラシが止んで、
ピアノがアドリブに入る時。
息が詰まるような美しいピアノ音の連なり!
連打される音に、一つも無駄がありません。
力強く弾かれている音もあるのですが、
それが不協和音にならず、どれもが澄んでいます。
間を生かし、緊張感を高めていく劇的なソロ展開も素晴らしい。
エヴァンス後期のベストに入る演奏でしょう。
今回、ブログを書くため、例の如く英文ライナーを読んでいると、
こんな記述がありました。
エヴァンスの死後、音楽雑誌に掲載された彼のインタビューです。
「私は、ものごとは懸命に取り組むことで進展すると信じている。
私が好きなのは長い時間をかけて苦しみながら成長してきた人、
特に自己洞察と献身的な努力を怠らない人たちだ。
彼らはキャリアを始めた時点で備えている能力よりも
はるかに深く、美しいことを成し遂げることができる」
このインタビューがライナーに載せられたのは、
おそらく、アルバムで展開されている音楽が、
その答えになっているからでしょう。
苦しみながらも、自己の音楽を磨くことを怠らなかったエヴァンス。
その彼が最晩年に残したメッセージは深く、美しい。
私が勇気づけられる理由は、こんなところにもありそうです。
P.S.
このブログを読んでくださっている皆さん、ありがとうございます。
年末年始、更新とペタをしばらくの間、お休みさせていただきます。
皆さんも良い年をお過ごしください。
