フィル・ウッズ/ウォーム・ウッズ | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。


Warm Woods


日曜、月曜と寒かったですね。

東京では12月の第二週に一度暖かくなったこともあり、

その後の冷え込みがちょっと厳しく感じられます。


そんな時はぬくもりのあるジャズを聴きましょう。

ということで、今回はフィル・ウッズ(as)の「ウォーム・ウッズ」です。

暖炉のあるジャケットを見ただけであったかくなってきます。


フィル・ウッズは1931年生まれ。

ジュリアード音楽院を卒業しているせいか、

完璧と言えるテクニックを身につけています。

それに加え、本作に聴かれるように情熱的なプレイが印象的な人で、

アルト・サックスが熱を帯びているように聴こえます。


彼のリーダー作は数多くあり、私が聴いた中で凡作はありません。

その中でもこの作品がおススメなのは、リラックスしたムードが

全編漂っているからです。

彼は1960年代末から70年代初めにヨーロッパに渡り、

緊張感の高い演奏で評価を得ますが、

私としては伸び伸びと歌心を発揮してくれた

50年代の演奏が好きです。


1957年の録音。

前年、ウッズはジャズ雑誌の「ダウンビート」で、

アルトサックス部門の「New Star賞」を獲得したばかり。

乗っている時期だったと言えるでしょう。

もっとも、演奏を聴けば、既に若手の水準ではないことが分かります。


メンバーは以下の通り。


Phil Woods(as)

Bob Corwin(p)

Sonny Dallas(b)

Nick Stabulas(ds)


①In Your Own Sweet Way

有名なデイブ・ブルーベックのオリジナル。

このアルバム全体を象徴しているトラックで、

「リラクゼーション」と「音楽へのハート」が満ちた演奏になっています。

イントロからメロディーにかけてのウッズが実に溌剌としていて、

彼が絶好調だったことが手に取るように分かります。

特に驚くのは音量の幅広さ。

ちょっと抑え気味に吹いたと思った瞬間、

ビッグ・トーンが鳴り響くという感じで、そのレンジの広さに圧倒されます。

しかも、それを悠々と、抒情性たっぷりでやってしまうのだからすごい。

何度かリズム陣がブレイクをはさむアレンジも効果的で、

この一曲だけでもぜひ多くの方に聴いて欲しいと思います。


②Easy Living

若さいっぱいの音色で演奏されるバラッド。

冒頭のメロディーからウッズが情熱を抑えきれないという感じで、

ぐいぐい押してきます。

スローテンポなのに「攻撃的」と言っていい演奏でしょう。

ソロに入ってもその勢いは全く衰えず、

時に繰り出される連続音符が熱い!

気がつけば他のメンバーのソロは一切なく、ウッズの独壇場でした。

恐れ入りました。


⑥Waltz For A Lovely Wife

録音前年に結婚したばかりの奥さんに捧げたウッズのオリジナル。

愛情あふれる可愛らしいワルツです。

短いメロディーに続いてテンポががらりと変わり、

ウッズの伸びやかなソロが始まります。

それにしても出てくる出てくる、

メロディーのような印象的なフレーズが。

豊富なアイディアと空間を鋭く埋めるプレイに感服です。


⑦Like Someone In Love

ウッズが本作の中で最も「自分をコントロールできた」ナンバー。

メロディーの力もあるのか、ここでは肩の力が少し抜けていて、

「気ままに吹いている」風情があります。

こういうウッズも非常に魅力的で、彼の詩的な面がよく出ています。


全編通して聴いているうちに、

このアルバムのタイトル、ひょっとして「Warm」よりも

「Hot」の方が似合うんじゃないかな、と一瞬思いました。

しかし、やはり「Warm」が正しいのです。

この言葉の方が、作品全体に流れる

「温かさ」と「リラックスした空気」をよく表現しています。

内容、ジャケット・デザイン、タイトルに至るまで完成された

見事なアルバムと言えるでしょう。