どう考えても相性が悪そうな二人が、案外仲が良かったりする、
そんな不思議な組み合わせってありませんか?
オスカー・ピーターソンとカウント・ベイシー。
共に偉大なジャズ・ピアノのスタイリストです。
それぞれのスタイルを乱暴ながら一言で表すと、
ピーターソンは「バリバリ派」、ベイシーは「トツトツ派」
ということになるでしょう。
この二人が組んだアルバムがあると知ったのは随分前のことですが、
正直、「安直企画に間違いない」と思いました。
有名人の二人を組み合わせれば買うファンは増えるはず。
レコード会社は万々歳・・・・・
そんな意図で適当に作られたのだろうと勝手に考え、買わずにいました。
ところが。
ある時、購入し聴いてみると・・・・
息が合っているではありませんか!
さすがいろんなミュージシャンと共演を重ねてきた大物同士、
合わせるところは合わせ、主張すべきところは主張する、
その呼吸が絶妙なのです。
しかも、興味深いのは時にどちらがソロを取っているのか
分からなくなってしまうぐらい、
両者のピアノスタイルが接近している局面があるのです。
実はピーターソンは「バリバリ」ばかりではないし、
ベイシーは「トツトツ」ばかりではない、
お互い「弾くときは弾くし、抑えるときは抑える」のです。
そんな二人の名人の出会いを素直に楽しみたい作品です。
1974年の録音。メンバーにフレディ・グリーン(g)が入っていることで
聴きやすいリズムが生まれています。
Count Basie(p,org)
Oscar Peterson(p)
Freddie Green(g)
Ray Brown(b)
Louie Bellson(ds)
①Buns
ピーターソンとベイシーが共作したオリジナルです。
スピーカー左がピーターソン、右がベイシー。
メロディーの段階から掛け合いが見事で、
「二人が競い合う」のではなく「二人で一つのものを作っている」感じが
分かります。
最初のソロはベイシー。
間を生かした彼らしい演奏ながら、
時にタッチが強く、「あれ?ピーターソン?」と一瞬思うぐらい。
やはり相手に刺激されたのでしょうか。
ピーターソンのタッチは逆にいつもほどアクがないように思えますが、
だんだんスピードアップしていくところは彼らしい。
ラストの掛け合いのところでは再び息が合い、
渾然一体のノリが聴けます。
②These Foolish Things
有名なスタンダード。
この曲でも二人はメロディーを弾き分けています。
ピーターソンからベイシーに代わったところで彼の訥弁が出ると、
急に切なさが増すから不思議です。
最初のソロはベイシー。
ここでは本来の?ベイシー・スタイルで、少ない音でこの曲の
悲しい美しさを描き出しています。
ピーターソンのソロもここでは抑えめ。
時々入るベイシーの「合いの手」が非常にタイミングよく、
相手のことをちゃんと聴いているのが分かります。
⑧Lester Leaps In
レスター・ヤング(ts)のオリジナル。
これはスイング感が相当出たトラック。
二人の「コール・アンド・レスポンス」が続いていきます。
それぞれの腕前と反応を楽しむべきでしょう。
ノリノリの曲なので、ここではどちらかと言えば
ベイシーがピーターソンに引っ張られています。
最初のベイシーの打ちつけるようなソロは
なかなか聴けるものではありません。
ピーターソンは本領発揮という感じで豪速球をどんどん投げてきます。
⑩S&J Blues
ピーターソンとベイシーの共作。
ここではベイシーがオルガンで、二人の役割分担が明確です。
ピーターソンが弾くゆったりとしたブルースを包み込むような
ベイシーのオルガン。
二台のピアノが無い分、ギターやベースがよく聴こえ、
しっかりしたリズム陣がアルバムの成功につながっていることが
よく分かります。
オルガンになると、ベイシーがサウンドの全体設計を任され、
ピーターソンが「胸を借りている」構図になります。
この安定感も素晴らしい。
オルガンとピアノの組み合わせはこの一曲だけですが、
もうちょっと聴きたかったな、と思わせるトラックです。
この組み合わせを思いついたプロデューサーの
ノーマン・グランツ、見直しました。
互いを刺激し合っていいものを作り出す。
年齢を重ねても挑戦を続けていた
巨匠の姿を知ることができる作品です。
