ソニーズ・クリブ/ソニー・クラーク | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

Sonny's Crib



ジャズマンが伸び伸びと「歌う」ように演奏するのを聴くと、

本当にうれしくなります。

プレイする喜びがストレートに伝わってきて、

「そうだよね、これがやりたかったんだよね」と

声をかけたくなるほどです。


ジャズの場合、メロディーでの歌い方がビシッと決まると、

それが作用してアドリブも快調になります。

この作品では、LPでのA面にあたる3曲のスタンダードで、

その成功例が聴けます。


メンバーはスターぞろい。

Donald Byrd(tp)

Curtis Fuller(tb)

John Coltrane(ts)

Sonny Clark(p)

Paul Chambers(b)

Art Taylor(ds)


しかし、録音が行われた1957年当時、

メンバーの多くはまだ新人扱いでした。

オリジナルのライナーを読むと、ドナルド・バードや

コルトレーンの経歴がいちいち書いてあり、

「これから有望」というトーンになっているのに驚きます。

誰にでも修業時代はあるのですね。


最初の3曲では、それぞれ冒頭を飾るホーンが違います。

この辺り、リーダーのソニー・クラーク(p)の演出がニクい、

ある意味洒落た作品となっています。


①With A Song In My Heart

ドナルド・バード(tp)の輝かしい音色で口火を切るトラック。

ここでのバードは若さいっぱいで、

急速調のリズムに乗り、遠慮なく、率直にメロディーを吹き切ります。

ソロもメロディーの勢いを受けて、歌心がいっぱい。

ハイ・ノートを多用しているところが古き良きハードバップという感じです。

続くコルトレーン(ts)は、細かな音を重ねるスタイルで攻めてきます。

マイルス・デイヴィス(tp)と行った前年のマラソン・セッションと比べ、

相当自信を持っていることが分かります。

その後、カーティス・フラーが彼らしい温かい音色のトロンボーンで入ってきます。

ソロのラストはクラーク。

短いですが、ここから若干テンポ・アップしているように聴こえる

歯切れのいい演奏。

ラストのメロディーは再びバード。この歌い上げ方も伸びやかで圧巻です。


②Speak Low

このトラックでメロディーを吹くのはコルトレーン。

何と、ラテン調のリズムに乗せてメロディーを演奏しています。

この意外なアイディアが生きて、コルトレーンの鋭さのある音色の底に

明るさがあります。

メロディーに続いてコルトレーンのソロ。

ハードなトーンではありますが、どこかで演奏を楽しんでいる感じがあり、

これもメロディー処理のなせる業かもしれません。

フラー、バードの快調なソロに続き、クラークが登場。

彼らしい「後ろ髪を引かれるような」ソロが聴けます。


③Come Rain Or Come Shine

この曲も意外なアレンジで、思いきりスローに始まります。

メロディーを担当するのはフラー。

何のフェイクもせずにストレートに吹いています。

しっとり情感を込める演奏に、彼のトロンボーンがよくはまっています。

メロディーのトーンを受けて、

クラークはマイナー風の美しいソロを展開していきます。

その後、コルトレーンからバードへとバトンが渡され、

それぞれが実にじっくりと「歌って」います。

ラストはバードがメロディーを担当して盛り上げる演出もお見事。


やはり、メロディーがいいと演奏全体が良くなる。

何のてらいもなくストレートなジャズが演奏できた時代ならではの

幸福な作品と言えるでしょう。