ジャズマンが伸び伸びと「歌う」ように演奏するのを聴くと、
本当にうれしくなります。
プレイする喜びがストレートに伝わってきて、
「そうだよね、これがやりたかったんだよね」と
声をかけたくなるほどです。
ジャズの場合、メロディーでの歌い方がビシッと決まると、
それが作用してアドリブも快調になります。
この作品では、LPでのA面にあたる3曲のスタンダードで、
その成功例が聴けます。
メンバーはスターぞろい。
Donald Byrd(tp)
Curtis Fuller(tb)
John Coltrane(ts)
Sonny Clark(p)
Paul Chambers(b)
Art Taylor(ds)
しかし、録音が行われた1957年当時、
メンバーの多くはまだ新人扱いでした。
オリジナルのライナーを読むと、ドナルド・バードや
コルトレーンの経歴がいちいち書いてあり、
「これから有望」というトーンになっているのに驚きます。
誰にでも修業時代はあるのですね。
最初の3曲では、それぞれ冒頭を飾るホーンが違います。
この辺り、リーダーのソニー・クラーク(p)の演出がニクい、
ある意味洒落た作品となっています。
①With A Song In My Heart
ドナルド・バード(tp)の輝かしい音色で口火を切るトラック。
ここでのバードは若さいっぱいで、
急速調のリズムに乗り、遠慮なく、率直にメロディーを吹き切ります。
ソロもメロディーの勢いを受けて、歌心がいっぱい。
ハイ・ノートを多用しているところが古き良きハードバップという感じです。
続くコルトレーン(ts)は、細かな音を重ねるスタイルで攻めてきます。
マイルス・デイヴィス(tp)と行った前年のマラソン・セッションと比べ、
相当自信を持っていることが分かります。
その後、カーティス・フラーが彼らしい温かい音色のトロンボーンで入ってきます。
ソロのラストはクラーク。
短いですが、ここから若干テンポ・アップしているように聴こえる
歯切れのいい演奏。
ラストのメロディーは再びバード。この歌い上げ方も伸びやかで圧巻です。
②Speak Low
このトラックでメロディーを吹くのはコルトレーン。
何と、ラテン調のリズムに乗せてメロディーを演奏しています。
この意外なアイディアが生きて、コルトレーンの鋭さのある音色の底に
明るさがあります。
メロディーに続いてコルトレーンのソロ。
ハードなトーンではありますが、どこかで演奏を楽しんでいる感じがあり、
これもメロディー処理のなせる業かもしれません。
フラー、バードの快調なソロに続き、クラークが登場。
彼らしい「後ろ髪を引かれるような」ソロが聴けます。
③Come Rain Or Come Shine
この曲も意外なアレンジで、思いきりスローに始まります。
メロディーを担当するのはフラー。
何のフェイクもせずにストレートに吹いています。
しっとり情感を込める演奏に、彼のトロンボーンがよくはまっています。
メロディーのトーンを受けて、
クラークはマイナー風の美しいソロを展開していきます。
その後、コルトレーンからバードへとバトンが渡され、
それぞれが実にじっくりと「歌って」います。
ラストはバードがメロディーを担当して盛り上げる演出もお見事。
やはり、メロディーがいいと演奏全体が良くなる。
何のてらいもなくストレートなジャズが演奏できた時代ならではの
幸福な作品と言えるでしょう。
