今年も本当にあと残りわずかになってきました。
1年を振り返ることが増えてきますよね。
今年、流行ったものの一つに「ゆるキャラ」があります。
10月にはとうとう彦根市で「ゆるキャラまつり」まで開催されました。
困難な時代だからホッとしたいのか、何なのか・・・・
実は「ゆるいジャズ」があります。
きょうはそんな一枚、「ワン・フット・イン・ザ・ガター」をご紹介しましょう。
何が「ゆるい」かというと、全編決めごとがないジャム・セッションで
終始しているのです。
スタジオに入るまで、ミュージシャン達にはどんな曲を
レコーディングするのかすら知らされていませんでした。
リーダーのドナルド・ベイリー(ds)の言葉によれば、
「みんなをゆるく(“loose”)しておいた」のです。
このレコーディングのアイディアはベイリーが思いつき、
レコード会社にかけあって実現したものだそうです。
しかも、単なるスタジオでのセッションではなく、
友人やジャズ好きを聴衆として集め、ライブ形式で収録されました。
そのせいか、聴衆もリラックスして音楽を楽しんでおり、
「パーティーのような雰囲気」(ベイリー談)が漂っているのが分かります。
おそらく、ベイリーは親密な空気の中で、思いきりブルースを「ゆるく」
演奏したかったのでしょう。
1960年、NYでの録音。
メンバーは以下の通り。
Dave Baily(ds)
Clark Terry(tp)
Curtis Fuller(tb)
Junior Cook(ts)
Horace Parlan(p)
Peck Morrison(b)
皆、ブルースの名手です。
ちなみに、収録されている曲はたったの3曲。
ジャム・セッションだけに一番短い曲でも10分を超えます。
その場限り、別テイクも一切ない、まさに「一発勝負」です。
①One Foot In The Gutter
クラーク・テリー(tp)のオリジナル曲です。
のっけからゆったりしたブルース臭濃厚のメロディーで幕を開けます。
ここでの聴きものは作曲者のテリー。
彼のソロはいつも「面白いおしゃべり」のように聞こえます。
ここでも早口だったり、つぶやいてみたり、喚いてみたり(?)、
実にいろんな表情で語りかけてきます。
この後、ジュニア・クック(ts)の男性的なソロ、
カーティス・フラー(tb)の伸びやかなソロが続きます。
ホレス・パーランはこうしたブルースにぴったりのピアニスト。
ソロでは時に打ちつけるようなアーシーなタッチで
聴衆から拍手をもらっています。
③Sandu
曲が始まる前、ベイリーがメンバー紹介をします。
自分以外のメンバーを紹介し終わったところで演奏に入ろうとすると、
聴衆から「ドラムは・・・・」の声。
それを受けてベイリーがようやく自己紹介をします。
彼の慎み深い人柄が表れていて、何ともいい瞬間です。
曲はトランペッターのクリフォード・ブラウンのオリジナル。
20分にもなる長い演奏です。
ソロはフラー~テリー~クック~パーランと続きます。
ここでは細かな演奏をあれこれ指摘するよりも、
リラックスして各人の長いソロを味わうべきでしょう。
「looseな演奏のお手本」とも言うべき、温かい雰囲気に酔えばいいのです。
ただ、それを支えているのがベイリーの手堅く、反応のいいドラム
(時々、巧みにテンポを変えている)にあることは間違いありません。
リーダーでありながらソロを取らないベイリー。
彼の「Natural Jazz Feelingを楽しんでほしい」(ライナーより)
という志が全体を通して伝わってきます。
そういえば、こういう「ゆるい」ジャズ、最近はあまり聞きませんね。
でも、演奏を楽しむという、ジャズの原点はこんなところにあるような
気がします。
