ジャズを聴くときに求めるもの、いろいろあると思います。
安らぎ、気持ちよさ、激しさ、愁い、温かさ・・・・・
私の場合、これに「渋さ」が加わるときがあります。
いま、何かにつけ「言いたいことを明確にすること」が求められ、
あいまいさなどは敬遠されがちです。
でも、人間そのものがあらわれる音楽では、いろんな表情があっていい。
言葉にできないもの大歓迎!
というわけで、人間の中から滲みだしてくるものの一つ、
「渋み」を感じさせてくれる作品をご紹介しましょう。
ピアニスト、シダー・ウォルトン(p)が1967年に録音した作品。
彼は、1960年代から頭角を現したピアニストで、
アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズでの
活躍以降、有名になりました。
ハード・バップを踏まえつつ、新しいモーダルなプレイもできるということと、
その安定感で重宝されてきた人です。
強烈な自己主張をするタイプではないので、サイドマンとしての起用が多く、
この時期のリーダー作も多いとは言えません。
そんな彼が作ったリーダー作、まずメンバーが渋い!
プロデューサーのドン・シュリッテンが
自分の聞きたい通好みの音楽を作るために集めたのか、
はたまたシダーの趣味なのか・・・・。
Cedar Walton(p)
Kenny Dorham(tp)
Junior Cook(ts)
Leroy Vinnegar(b)
Billy Higgins(ds)
特に、ケニー・ドーハム(tp)の参加が
作品全体に影響を与えていると思います。
これについては後述します。
①TURQUOISE TWICE
シダーが作曲したオリジナル。
このトラックの不思議さは、斬新さと「渋さ」がミックスしていることです。
冒頭のピアノはモーダルな響きで、この時代に生まれた
新しい音楽が始まることを予感させます。
しかし、その後に切り込んでくるドーハムのトランペットが非常に枯れていて、
一瞬「あれ?合うのかな?」と思ってしまいます。
でも、心配無用。
ハードボイルドの小説で、現代社会に人間臭い探偵が登場するように、
なぜか曲全体の中でドーハムの音がぴたりとはまるのです。
おそらく、ドーハムは自分のやや古いスタイルは自覚しつつ、
他のメンバーの音楽を理解して、自分の居場所を作ったのでしょう。
ベテランらしい「渋い」配慮だと思います。
その後のシダーのプレイは、モード的な新しいタイプの組み立てですが、
どこか落ち着いた、これまた「渋い」プレイ。
やはりドーハムに影響されたんでしょうか。
②TWILIGHT WALTZ
これもシダー作曲のオリジナル。
まずメロディーでドーハムが強力なリズム陣を背景に、
哀愁漂うトランペットを響かせます。
これでこの曲の「渋いトーン」が決まってしまったようなもの。
続くシダーはモーダルで時に攻撃的なプレイをしますが、
どこかで抑制がきいていて、爆発しません。
その後、ドーハムによるメロディーに戻ります。
なんと・・・ドーハムの参加はメロディーだけ!
それでもこの曲に対する影響力、不思議なものです。
考えてみると、このアルバムのために集まったメンバー、
皆「いい耳を持っている」人ばかりです。
お互いの音をよく聴き、どんな音楽を全体として作るか、
考えられる人たちではないかと推察します。
この作品の「渋み」は、ドーハムの影響力もさることながら、
それぞれがお互いを立てる「謙譲」の精神にあるのではないでしょうか。
そこに、リーガーが持つ新しい時代へのセンスが加わって、
忘れ難い佳作となっています。
