前回、ブルー・ミッチェル(tp)が日野皓正の作品
「アローン・アローン・アンド・アローン」を演奏したことを書きました。
それなら、ご本人の演奏も紹介しなくては、
ということで「ヒノテル」の記念すべき初リーダー作です。
1967年、ヒノテル25歳(!)の吹き込みです。
当時すでに日本では第一級のトランペッターとされていたようですから、
大したものです。
メンバーは以下の通りです。
日野皓正(tp)
大野雄二(p)
稲葉国光(b)
日野元彦(ds)
稲葉氏以外はみな20代でした。
演奏も非常にフレッシュな感じがします。
今回、このアルバムを聴き直してみると、改めてヒノテルの
リーダーとしての資質を感じます。
ブルー・ミッチェルが「名脇役」なら、ヒノテルはやはり「主役が似合う」のです。
初リーダー作にもかかわらず、このセッションの空気を支配しているのは
明らかに彼です。
パンチの利いたフレーズ、緩急の付け方、フッと空く「間」・・・・
それら一つ一つに他のミュージシャンが感化され、
思わず反応している様子がよく分ります。
この若さにしてこの落ち着き具合と統率力。
おそらく、若きヒノテルには、自分が作ろうとしている音楽が
明確に見えていたのだと思います。
そんな大将がいれば、バンドメンバーも従わざるを得ないでしょう。
①アローン・アローン・アンド・アローン
初リーダー作の一曲目が自作。しかも、スローなバラード。
これ以上のカッコいいデビューがあるでしょうか。
朗々と、かなり抑えめにメロディーを吹くヒノテル。
最初の一音を聴いた時から、名演が始まることはすぐに予感できます。
ここで素晴らしいのはメロディーの吹きっぷりもさることながら、
ソロの構成力です。
最初はメロディー同様、やや抑え気味なのですが、
次第にテンポを上げ、鋭いフレーズも交えてダイナミックに
盛り上げていくところは実に見事です。
しかも、一本調子ではなく、時に一息入れたり、ハッとするような
ハイ・ノートを飛ばしたりと、その間合いが絶妙なのです。
この構成力とクールさ、本当に心憎いです。
ブルー・ミッチェルが本人より2年先に録音してしまったこの曲ですが、
ヒノテルは先輩をしのぐ表現を見せたと言っても過言ではないでしょう。
④ダウンスイング
これも非常にクールなヒノテルのオリジナル曲。
簡潔な4ビートに乗って、音数を絞ったトランペットソロが取られ、
マイルス・デイヴィスの影響をかなり受けていたことを
窺わせます。
ヒノテル自身、「自分はスペース(間)を大切にしている」と
語っているのを読んだことがありますが、
彼の考え方とマイルスのプレイには呼応するところ大なのでしょう。
まだ若さが残る面もあり、ところどころ荒削りな表現も見えますが、
この時、既に相当なレベルでのスタイルを確立していたことに驚きます。
その後、ヒノテルはフュージョンをはじめ、様々な挑戦をしていくわけですが、
これほどまでに自分の音楽が見える人なら、
一つのところにはとどまっていられないよな、と納得してしまいます。
やはり自分の世界を作る「主役が似合う」人なのでしょう。
