オール・スルー・ザ・ナイト/ビル・シャーラップ | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

All through the night



秋の夜、落ち着いて過ごす時間にぴったりのピアノ・トリオ。


私が持っているこのCDには、輸入元である日本の会社がつけた

オビがあります。

いわく、

「全国1000万人のピアノ・トリオ愛好家から注目を集める

 新進気鋭のピアニスト、ビル・シャーラップの最新作が

 ついに登場。・・・」

ピアノ・トリオのファンが1000万人って、どこから出た数字??

と、突っ込みたくもなりますが、この作品が発表された1998年当時、

話題を呼んだことは確かです。


録音当時、まだ30歳そこそこの若手ミュージシャンが

50年代のプレーヤーかと思わせるような正統的なピアノを弾く一方で、

現代ならではの躍動感も感じさせる・・・・。

その雰囲気のよさと安定感に、

購入したとき私も「こんなピアニストがいたのか!」と驚きました。


オリジナル・ライナーでは大先輩のピアニスト、ジョージ・シアリングが

ベタボメしています。

「このCDには全てがあるように思える・・・タッチ、スイング、サウンド、正確さ、

円熟したジャズ・ピアニストならではの全てがあるのだ」

というこの記述は、最高級の賛辞でしょう。


メンバーはリーダーのシャーラップの他に、以下の二人です。


Peter Washington(b)

Kenny Washington(ds)


3人の相性がいいのか、非常にまとまりのあるトリオです。


好演揃いですが、作品全体の雰囲気を支配しているのは

コール・ポーター作曲のタイトル・チューン

①「オール・スルー・ザ・ナイト」でしょう。

冒頭のピアノ・ソロによるイントロが強弱の付け方、

両手のバランスの良さ、そして何よりハートのある歌い方で出色の出来です。

ここでのシャーラップのソロは夜の中を鮮やかに走り抜けていくような

爽快感があり、それでいてスピードだけに頼らない落ち着きもあります。

リズム陣が加わる際のブリッジのつけ方も素晴らしいですし、

ケニー・ワシントンのサクサクいうブラシは全編にわたり非常に効果的。

この1曲だけでも忘れられない作品になっています。


心地よい秋の夜、部屋で流すのにおススメです。

ただ・・・欲を言えば、もう少しスリルが欲しい。

ジョージ・シアリングもそうですが、ちょっと「上品すぎる」きらいがあるのです。

殻を破ったら歴史に残るピアニストになるのでは、と思うのですが、

それはファンの無いものねだりかな・・・・。

何にせよ、秋の夜長のお供に最適の一枚です。