秋の夜、落ち着いて過ごす時間にぴったりのピアノ・トリオ。
私が持っているこのCDには、輸入元である日本の会社がつけた
オビがあります。
いわく、
「全国1000万人のピアノ・トリオ愛好家から注目を集める
新進気鋭のピアニスト、ビル・シャーラップの最新作が
ついに登場。・・・」
ピアノ・トリオのファンが1000万人って、どこから出た数字??
と、突っ込みたくもなりますが、この作品が発表された1998年当時、
話題を呼んだことは確かです。
録音当時、まだ30歳そこそこの若手ミュージシャンが
50年代のプレーヤーかと思わせるような正統的なピアノを弾く一方で、
現代ならではの躍動感も感じさせる・・・・。
その雰囲気のよさと安定感に、
購入したとき私も「こんなピアニストがいたのか!」と驚きました。
オリジナル・ライナーでは大先輩のピアニスト、ジョージ・シアリングが
ベタボメしています。
「このCDには全てがあるように思える・・・タッチ、スイング、サウンド、正確さ、
円熟したジャズ・ピアニストならではの全てがあるのだ」
というこの記述は、最高級の賛辞でしょう。
メンバーはリーダーのシャーラップの他に、以下の二人です。
Peter Washington(b)
Kenny Washington(ds)
3人の相性がいいのか、非常にまとまりのあるトリオです。
好演揃いですが、作品全体の雰囲気を支配しているのは
コール・ポーター作曲のタイトル・チューン
①「オール・スルー・ザ・ナイト」でしょう。
冒頭のピアノ・ソロによるイントロが強弱の付け方、
両手のバランスの良さ、そして何よりハートのある歌い方で出色の出来です。
ここでのシャーラップのソロは夜の中を鮮やかに走り抜けていくような
爽快感があり、それでいてスピードだけに頼らない落ち着きもあります。
リズム陣が加わる際のブリッジのつけ方も素晴らしいですし、
ケニー・ワシントンのサクサクいうブラシは全編にわたり非常に効果的。
この1曲だけでも忘れられない作品になっています。
心地よい秋の夜、部屋で流すのにおススメです。
ただ・・・欲を言えば、もう少しスリルが欲しい。
ジョージ・シアリングもそうですが、ちょっと「上品すぎる」きらいがあるのです。
殻を破ったら歴史に残るピアニストになるのでは、と思うのですが、
それはファンの無いものねだりかな・・・・。
何にせよ、秋の夜長のお供に最適の一枚です。
