ご主人さまがお風呂のお湯を落としてるうちに、買ってきた飲み物を冷蔵庫にしまった。
テレビが大きいねー、とか話しながら、
並んでソファに座ってご主人さまもわんわんもタバコを1本。
ご主人さまは普通の顔してタバコ吸いながらテレビ見てる。
わんわんは、たぶん普通っぽくしてたけど、内心はどきどきしてた。
照れ臭くて、ご主人さまに触れるきっかけが掴めないよ。
「なに?」
「…うん」
こっちを見たご主人さまとパチンと視線がぶつかった。
ぶつかったってことは、わんわんはご主人さまを見てたってこと。
エイッて気持ちで、頬っぺたって言うか口唇の端っていうか、
ようするにビミョーな場所にキスをした。
「なんだよ(笑)」
なんだよ、って言う口調が優しくて、少し安心。
腕を回してご主人さまの腰辺りを抱きしめるようにしながら、
今度はちゃんと口唇を狙ってキスをした。
ご主人さまの腕がわんわんの体に回ってくるのを感じる。
後ろから頭を支えるみたいに、手の平で包んでくれてる。
「……かみ」
ご主人さまに触れられて、髪のことを思い出した。
「髪?」
少しだけ口唇を離して、そのまま口唇同士が触れそうな距離でする会話。
「…髪…わんわんが髪切る夢みた?」
「ああ(笑)長いな。良かった」
「うん」
笑われると思ったのに、ご主人さまは髪の先のほうまで指で梳いて、
「良かった」と言ってくれた。
柔らかい口調。
長いままの髪を確認して、ホッとしたみたいな口調。
ほわんと胸の奥があったかくなって、鼻の奥がツンと痛んだ。
息が詰まるくらい嬉しくて、また口唇に触れながらご主人さまを抱きしめた。
上唇を吸って、下唇を甘噛みして、舌を絡めて。
ご主人さまの手の平が、長いままの髪をくしゅくしゅと掻き混ぜるように撫でてる。
「あふ」
口唇の隙間から声がこぼれ落ちてく。
声がこぼれるのは、きっと気持ちが溢れだすからだ。
きっと。
あんな声で
あんな口調で
良かった、なんて言われたら髪なんて一生切れない。
切りたくない
切れない