傷は抱えたままでいい 13 | あの空へ、いつかあなたと

あの空へ、いつかあなたと

主に百合小説を執筆していきます。
緩やかな時間の流れる、カフェのような雰囲気を目指します。

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「じゃあ、今日も部長に……」
「うん……有希、ごめん」

私の方を気にしながら、有希と里穂は部活へと向かっていった。
二人を見送って、私はため息をついて机に並べられたプリントに目を落とした。
明らかに1、2時間で終わるとは思えない量。でもそれが自分のしたことの結果なのだから文句も言えない。


廊下で担任に見つかった私は、すぐさま教室へと連れ戻された。
そして授業を無断で休もうとした罰として、これだけの量の課題を今日中に提出するよう命じられたのだ。
教科書にかじりついて一問一問頭を抱えながら問題を解いていく。

その間ですらも、リコのことは私の心から離れなかった。
彼女の席の方に目をやる。
昨日の補習の時とは違って、そこには誰も座っていない。


リコは結局、あの後から教室には戻ってきていない。
北崎と一緒に出て行ってから、すでに数時間が経とうとしているのに。

担任は最初こそ彼女を気にかけていたが、事情を聞いてからは何事もなかったように授業を進めた。
授業が終わり、昼休みを挟み、帰りのホームルームになっても特に気にする様子もなかった。

北崎だけは担任が荷物を回収し、どうやらそのまま下校したようだった。
なのにリコの荷物は机に置きっぱなし。ということはまだこの学校のどこかにいるのだろう。


いや、いるとするならきっとあそこしかない。

保健室。
ルイと呼ばれる人物がいた保健室。


「…………」
鉛筆を握っていない左手で頭を抱える。
間違いなく、リコには保健室の前に私がいたと気付かれてしまった。

具合が悪くなって、なんて言い訳は通用しないだろう。
“私”が、“保健室の前に”いることが、もうそれだけで特別な意味を持ってしまうのだから。




――――私に関わらないで

再び、リコに言われた一言を思い出す。

私のしたことは、その言葉を無視した行為だ。
少なくとも彼女は、そう感じるだろう。


彼女からの、忠告にも似た言葉を反故にした私。
一体何がどうなるというのだろう……
途端に妙な不安に襲われ、不意に視線をプリントから辺りに移す。


そこには、ずっといなかったはずのリコがいた。
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