のパート3です。
※このTHREAD、『ロッキー4』や『トランスフォーマー ザ・ムービー』のサントラ
等に曲を提供している映画作曲家、ヴィンス・ディコーラのプロジェクトバンドで、現時点では唯一のアルバム。
『ロッキー4』サントラでは2曲、『トランスフォーマー』ではオリジナル版で3曲、どちらもELPやYESに影響を受けたというのがはっきり分かるインスト曲を聞かせてくれるヴィンス・ディコーラ。
スレッドとしては、メンバーに、ブリティッシュ・トラッドベースのプログレッシブ・ロックバンド、ジェスロ・タルのドラマーだったドアン・ペリー(ヴィンスがこのプロジェクトの前に組んでいたバンドのメンバー)に、スティーヴィー・ワンダー/ジェイムズ・テイラー/ナタリー・コール/ハービー・ハンコック/ジョージ・ベンソン/ボビー・ウーマック/アース・ウィンド&ファイア/タワー・オブ・パワーといった多数の巨匠との共演経験があり、レイ・チャールズの愛弟子である全く畑違いのボーカリスト、エリス・ホールを起用するも違和感すらないハマった楽曲となってます。
90125イエスとELPが組み合わさったような、そう、真っ先に思い浮かぶのが、後に本当にイエスになってしまうワールド・トレードや前回ご紹介したマジェランでしょうか。よくよく考えてみると『ロッキー4』公開が1985年ですから、ヴィンス・ディコーラの方がこういう系統の先駆者なんですよね。ボーカルがR&Bなんで、なんかグレン・ヒューズが歌ってるようにも聞こえてきます。
話はずれますが、『トランスフォーマー』にはライオン(後にホワイトスネイクに加入するダグ・アルドリッジ、イングウェイ・マルムスティーン、ロン・キールと結成したL.A.メタル創成期のバンド、スティーラーのドラム、マーク・エドワーズ、N.W.O.B.H.M.バンド・タイタンのボーカル、カル・スワンらによって結成)の楽曲「トランスフォーマー」が入っていたので良く聴いてましたが、他の曲これまでほぼ聴いてませんでしたね(笑)。
『ロッキー4』ではサバイバーの超有名曲「アイ・オブ・ザ・タイガー」の他、マーク・トルエンがキング・コブラ脱退後からバレット・ボーイズ結成までの間に作ったバンド・タッチ(現デフ・レパードのヴィヴィアン・キャンベルが結成したリバードッグ1stアルバム発売後に加入後ガンズのギタリストだったギルビー・クラークの1stアルバムにも参加したドラマーや後にL.A.メタル老舗バンド・アイコンに加入したボーカリストが在籍。マークは当時ギタリスト)のほぼジャーニーな楽曲「The Sweetest Victory」も聴けます。
12. Vision
/ LAST DESCENDANTS
※前回ご紹介した異形テクニカル・スラッシュバンド、メコン・デルタベーシストのラルフ・ヒューベルトプロデュース作品のレーベル、AAARRGの14番の栄誉に輝くバンド。このアルバム本当に大好きで聴く時はアルバム全部通しで聴いてます。
しかしとにかく一般には全くオススメできない変なアルバムです。曲はなんとも説明しづらいので聴いてみて下さい。ドイツ発売ながらバンドは83年結成のアメリカ🇺🇸カリフォルニア州の5人組バンド。後にご紹介するターゲット同様、元のバンドの姿がどんなだったかは分かりませんが、もっとストレートなパワー/スラッシュメタルバンドがラルフ・ヒューベルトによってグネグネに捻じ曲げられた感じです。執拗なリズムチェンジはハマる人はハマりますが、多分ハマらない人は全くハマらないでしょう。ボーカルが苦手な人が多いかも。
今初めて気づきましたが、アルバムジャケットに日本🇯🇵の国旗が描いてあるんですね。ところでメンバー写真ですが、4人のいかにもメタルでキメたメンバーに混じっている中央の帽子を被ったおじさんがめちゃくちゃ違和感なんですが、バンドコンセプト的に当時これでよかったのでしょうか?
13. What If? / SIEGES EVEN
※ドイツ🇩🇪の老舗テクニカル・メタルバンド、シージス・イーブン。1980年代初頭にバンド結成、元はソドムというバンド(良く知られてるドイツ🇩🇪のパワーメタルの方とは全くの別バンド)で1983年にはデモをリリースしたらしいです。
その後1988年にスチームハマー・レコードからアルバム『Life Cycle』を発売。何故かこのアルバム、日本ではアメリカ🇺🇸ニューヨークのスラッシュバンドと抱き合わせで『ナパームvsシージス・イーブン』という変則的なカップリングアルバムとしてテイチクから販売されてましたね。
やっぱりテイチクとしてもシージス・イーブンだけでは前衛的すぎて売上がヤバいと思ったんでしょうか。当時やってたことはアメリカ🇺🇸テキサス州の伝説的異形テクニカル・スラッシュバンド、ウォッチタワーそのもの(ボーカルスタイル含め)でしたが、次作アルバム『Steps』(1990年)でいきなりアルバム前半分を組曲にし、さらにスピードと激しさを無くし楽曲を弛め地味にするという、さらに一般リスナーを置いてきぼりにするアルバムを発売。個人的にはこのアルバムもよく聴いてましたが、あまりの静謐さに変拍子でそのまま睡眠に入ってしまうことも。
この後シージス・イーブンはモダン化に向かい、2000年以降の再始動後はメロディアスロック化していきます。1991年〜1997年の中期モダンプログレ3作(『A Sense of Change』『Sophisticated』『UNEVEN』)のCDは入手しづらいですね。この曲はギターの音がホールズワースのシンタックス(ギター・シンセ)みたいで洒落ているところ、泣きがあるところ、ギターがクリーントーン多めでメタルメタルしてないところが好きな曲です。もちろんメタルメタルした曲も好きですけれど。
14. Esperanto
/ D.F.A.(Duty Free Area)
※イタリアのプログレッシブロックバンド。97年に1stアルバムを発売。本作は2ndアルバム。正にこれぞプログレッシブロック!、を体現している曲。個人的にはKENSO +ナショナルヘルス+i.o.u.といった印象なんですよね。入りはアウター・リミッツぽいですが。普段はインストバンドなんですけど、この曲では同じイタリア🇮🇹のプログレッシブロックバンド、Deus Ex Machinaのボーカル、アルベルト・ピラスがイタリア語で歌ってます。イタリアプログレ風というよりは、i.o.u.のポール・ウィリアムスに近い(近づけた)歌い方じゃないですかね。
15. Far Away (From Yesterday)
/ CHYLD
※このバンドが一番紹介に困るというか、カテゴライズしにくいバンドなんですよねー。低い点数だった某雑誌のレビューを見てからずーっと気になってジャケットの図案だけを記憶していて、数十年後の数年前にやっとCDを手に入れたという所謂レア盤だったんですが、今調べたら某有名レコード店のオンラインで880円(!)で売ってました(驚愕!!)。あの音の悪さで有名なニュールネッサンス・レコードから発売されたCDなんですけど、このバンド、アメリカ🇺🇸ペンシルベニア州の4人組バンドで、このアルバムの他にシングルを1枚だけ出しているそう。元々当時流行ったポップ・メタルだっだバンドは、リーダーだったボーカル/ギターのジョン・ジョセフの元にピンク・フロイド、ブラック・サバスからR.E.M.まで多くの異常な程の異なる音楽の影響を受けたらしいです。フィジカル・グラフティー時代のレッド・ツッペリンとピンク・フロイドの折衷と書いた解説もありました。
それぞれの演奏がめちゃくちゃ上手いわけでもなく、確かになんとなくボーカルがプラントぽくもあるんですけど、アルバムを通しで聴いてイメージで近いかなと思うのは、アコースティックライブのテスラがラッシュを演奏しているそんな感じ、いや違うかなー。この曲はL.A.メタルのバンドがプラント声のボーカルでカントリー風にピンクフロイドを演奏しているっていう、説明するとバカみたいな感じになるという、本当にどうにも難しいバンドです。
16. The Strain / MORDRED
※1995年に解散したこのバンドが2021年に27年ぶりのニューアルバムを発売すると聞いた時にはめちゃ驚きました。それもドラムを除く6人中5人がオリジナルメンバーという信じられない事態に。しかし何故当時ですらそんなにメジャーじゃなかったモードレッドが今この時期に?というのが実直な驚きでしたね。このアルバムもよく聴いてました。
バンドをカテゴライズするならベイエリア・スラッシュということになるんでしょうけど、当時このアルバムを聴いていたのはやっぱり当時まだ珍しかったDJがいるメタルバンドだったって事が一番です。今のニュー・メタル界隈では当たり前のヒップホップからの引用が当時ではまだまだ当たり前でなかった時期このバンドは斬新だった訳で、その意味ではプログレッシブなバンドでしたね。
実際にDJ(メンバー)が皿回してました(1991年)
17. Cosmopokitismo Centimetoropolitano
/ DEUS EX MACHINA
※巷にはデウスエクスマキナというバンドと同名のモーターサイクル/サーフィン/スケートボードのアパレルブランドがあるんですね。
デウス・エクス・マキナとはラテン語で、古代ギリシャ劇の最後で機械仕掛けで上から舞台に降りてきて円満にその場を解決する神様役のこと、イコール転じて「大団円」の意味だとか。
この曲はプログレッシブロックから迂回してジャズ・ロック的アプローチからもメタルまたはそれ以上の激しさとカタルシスを表現出来る方法があるという、キング・クリムゾン『RED』(ギターは影響あるかな)やヴァンダー・グラフ・ジェネレーター『VITAL』ともまた違う方法論ですかね。ボーカルのアルベルト・ピラスもD.F.A.とは違う狂気性を帯びた歌い方になっていたり凶暴なオルガンや切れ味鋭いギターで、10分間がそれ程長く感じない緊張感が続く一曲かと。
18. Knights Of The Round Table
/ORACLE
※曲名はアーサー王物語の『円卓の騎士』という意味らしいです。アメリカ🇺🇸フロリダ州のパワーメタルバンド。元々プロジディ(PRODIGY)と名乗ってデモカセットを出したものの、アルバム発売にあたり曲順とグループ名を変えてリリースしたらしいです。あの時代に雨後の筍のごとくクローンが存在した"ジェフ・テイト声"のボーカル、中盤練習のようにとって付けたようなクラシカルフレーズのギターソロ、今ひとつ煮え切らない展開とあまり評価出来る部分は少ないものの何故かたまに聴いてしまいますね。このバンド、その後ドラムが短期間アイスド・アースに居たり、ベースが同じくアイスド・アースやメガデス、ネバーモアなど名の知れたバンドに在籍したということで後に知られるようになったアルバムだそうです。そういえばなんでこの曲取り上げたんだっけなー?
19. Absolusion By Termination
/ TARGET
※時代の徒花(あだばな)、個人的傑作中の傑作。ベルギー🇧🇪のバンドターゲットの2ndアルバム。これまで多分聴いた数はゆうに三桁超えてます。それも常にアルバム全曲通して。
このアルバムもメコン・デルタ、ベースのラルフ・ヒューベルトのレーベルAAARRGの16番。当時メタル雑誌の広告に載って速攻新宿に買いに走った思い出が。もちろん初版AAARRG16番バージョンです。オリジナルは希少ですが、以降いくつかのレーベルから1stとのカップリングCD含め数回再発されているので、ややCDは購入し易くなったかも。
とにかく全部聞かないと内容が把握できないバンドで何回聴いても面白い。前回紹介したD.B.C.同様、比較対象はキャプテン・ビヨンドレベル。
ちなみにキャプテン・ビヨンドとは、アメリカ🇺🇸のサザンロック専門レーベル・カプリコーンに突如現れた突然変異体。
元ディープ・パープルボーカル、ロッド・エヴァンス、元アイアン・バタフライギター、ラリー"ライノ"ラインハルト、同じく元アイアン・バタフライベース、リー・ドーマン、そして元ジョニー・ウィンター・バンドのドラム、ボビー・コードウェル(あのシンガーソングライターとは別人)によるスーパー・バンド。
1972年に発売された1stアルバム『キャプテン・ビヨンド』は40分に満たない時間ながらとにかくあらゆるものを取り込み、心の無いロッド・エヴァンスの加工されたボーカルとうねうねと形を変えるこれらの曲達こそ、テクニカル・メタルの元祖なんじゃないかと個人的には思っているえげつなさNo.1アルバムなんです。
※全曲約35分のせわしなさです
説明が長くなりましたが、ターゲットの2ndはまあそれくらいの衝撃のあるアルバムです。
ちなみに1stアルバムは個人的にイマイチでほぼ聴きません。2023年に突如としてターゲットのデモ曲アルバム『Demo Anthology』が発売され狂喜乱舞したのも束の間、聴いてみたらはっきりいってつまらない。つまり2ndアルバムのみが特異なアルバムだったということで、このアルバムにラルフ・ヒューベルトがかなり頭を突っ込んだんじゃないか、という想定も。
一般リスナーには全く向いてないアルバムですが、個人的にはかなり影響を受けました。
余計ですが、キャプテン・ビヨンドの2ndアルバム『Sufficiently Breathless』(1973年)は1stアルバムを期待して聴くと肩透かしNO.1アルバムなのでご注意を。聴くなら再結成アルバム『Down Explosion』(1977年)の方をおすすめします。
追記)そうそう、トリビアぽくなりますが、キャプテン・ビヨンドの2ndアルバム発売直後ロッド・エヴァンスは脱退し、再結成アルバムのボーカルはウィリー・ダファーン(Willy Daffern)に変わったんですが、ゲーリー・ムーアがN.W.O.B.H.M.ムーブメントに呼応し結成、1980年にアルバムを発売したバンドG-FORCEのボーカル、ウィリー・ディー(Willie Dee)と実は同一人物だったりします。
20. Living In The Eage
/DGM
※最後くらいは真っ当な曲ということでDGMを。ジャーマン・メタルと思いきやイタリア🇮🇹のプログレッシブメタルバンドなんですよね。この曲を聴くとメタルを聴き始めた頃を思い出します。ロボット物アニメの主題歌のような親近感を覚える曲かも。そういえばこのアルバムの日本盤ボーナストラックに『北斗の拳』のカバー曲がありました。
こちら来日公演でDGMが歌った時の動画
完全に日本語でしたね。
今回はここまで
それでは!