最後の砦「香港」 | SKYのブログ

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オーストラリア、シドニーから

世界のお金持が「財産を隠したい、徴税を免れたい、ワケアリのお金を一時預けたい」は昔から「ヤバイお金はスイスに預ける」が定番でした。

ところが、ご存じの通り、世界の金融の中心である米国に「情報開示に応じなければ米国内の口座を凍結し・送金停止措置を講ずる」と言われればどの国も無視する訳にはできません。


スイスのプライベートバンク、ルクセンブルグ、ケイマン諸島、シンガポールなど次々と降参、秘匿性は揺らぎ 世界各地の「脱税天国の秘密口座」は次第に消滅しつつあります。

特にアメリカ同時多発テロ以降、世界(主に米国)がマネーロンダリングを厳しく取り締まる中にあって「何が何でも顧客情報は明かさない国」では通用しなくなり、欧米諸国の求めに応じて(圧力に屈して)銀行情報の「守秘制度」を解除することを余儀なくされています。そして、今、最後の砦は「香港」となりました。


1997年、香港の主権が英国から中国に返還されて16年経過しましたが、香港にはイギリス時代から完備された法体系が今だに残っており税制面が優遇されている「特別地域」タックスヘイブン(租税回避地)には間違いありません。 

中国北京政府としても表立っては「国際社会に協力する姿勢」は示しながも、さまざまな事情からグレーな部分は残しておきたいのです。 

その第一の理由は、中国の高級官僚、ビジネスマン達が資金を蓄財する「灰色収入」の受け皿として香港にある中国銀行 香港 (Bank of China(Hong Kong) Limited) 他 香港にある約20銀行に不法送金スポットとして利用しているからです。 そしてその一部の資金が、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどへの送金と直接香港への不動産マーケットにも大量にお金が流れています。

習主席就任前後から、「汚職」「不正」の摘発が厳しく行われているのでが、広い国土、複雑な組織、幅広い業種までなかなか手が回りません。

昨年2012年に中国の大都市の市長、高官などで職権濫用や収賄の罪に問われ逮捕、解任された官僚はなんと数千人以上もいます。

その他、逮捕、起訴されずに、海外に逃亡した高級官僚が国外に持ち出した不正な蓄財は、概算で2000億ドル19兆円)を超えました。

これら「灰色収入」と呼ばれる裏金損害は、昨年の中国のGDPの3パーセントに相当する金額です。

資金を不法送金している中国官僚やビジネスマン達が、昨年に買った不動産の購入額は、推定70億ドル (7000億円)にもなります。

アメリカ、カナダ、ロンドン、オーストラリアのほか、フランス、イタリア、ギリシャ、キプロスの保養地には「新中国人」の居住区が誕生しています。

Financial Timesが北京発のニュースとして、「過去15年間に国外にも持ち出された不法利得(ill-gotten gains)は1240億ドル (現在の為替レートで

10兆円という巨額に上る)との中央銀行の公式発表も伝えています。


そして、これらのマネーを持ち出したのは、共産党幹部、警察官、司法官僚(中国では裁判官、検察官、弁護士は一元的に党管理下にある)、国営企業経営者で1990年代から昨年迄で約2万人にも上るとその報告書に書かれています。 そして同時に過去12年間で18487人の汚職官僚が摘発されたと報告されています。


一説によると、中国で汚職した公務員の30%は国外に逃亡、そして残りの70%は摘発、告訴されているのです。

(但し、汚職したかどうか証拠不十分、またはグレーゾーンの人々はこの数字に含まれませんので正確な数字はまったく不明です)最近、現体制の内部抗争によるものが原因か、中国元高官が かってワイロに係わったとの「暴露」報道が英国、米国などあちらこちらで発生しています。

「灰色収入」が蔓延している中国では、公務員の殆どが 叩けば埃が出てくる体質とも云われています。

米研究機関の調査では2000年から2009年にかけ、非合法なルートで中国から流出した資金は27000億ドル(約345000億円)で世界一とのこと。

そのひとつが「裸官」と呼ばれている高級官僚達の海外逃亡の手口です。

「裸官」とは「子供を欧州、米国、カナダ、豪州、ニュージーランド、香港、シンガポールなどに留学させ、そこを根拠地にして、不正蓄財したマネーを留学先の国に送りさらには妻もその国に送って、自分自身は “真っ裸” で 官位に居座り、定年近くなると(男性60歳、女性55歳)自分も偽名で海外へ逃亡、家族と一緒に暮らす方法です。

しかしながら、汚職の撲滅を進める習近平指導部の意向を反映して、中国共産党の最高指導部入りを有力視されながら失脚した 元重慶市トップの薄熙来(ポーシーライ)被告が収賄と横領、職権乱用の罪に問われた裁判の判決公判が先日、山東省の済南市で開かれ、薄元書記に無期懲役を宣告しました。 

現在、各省で不正蓄財をしている高級官僚達はこの裁判結果を非常に重く受け止め戦々恐々する結果となりました。

この薄熙来事件は予想外の重刑を下した政治決着であり、共産党の高官たちの浮き沈みをみていると、“栄光と挫折転落” は、紙一重の違いのように思えます。

我家から車で5分、Chatswood チャッウッド地区、別名China Village には多くの「裸官ファミリー」が多く住んでいることで有名な場所です。

中国返還前は香港チャイニーズの拠点でしたが、数年前から逆転して中国本土系が60%、 香港系が40%となりました。

「裸官ファミリー」は富裕層なので、お金に糸目をつけません。 英語も喋らず、マナーが悪いとのうわさも本当のようです。

レストランでの食事、百貨店、スーパーなどの買い物も大胆で金払いが良いので、シドニーでもこの地区だけは、他の地区に比べてかなり物価が高いことでも知られています。


中国当局の厳しい言論統制、閲覧に反発して Google, Yahoo ともに中国から撤退。 代わりに発足した中国版ツイッター「Weibo」のユーザ数は現在6億を突破しており、1日あたりの投稿メッセージ数は1億に上るという。 人口13億人。 ひとつ方向を間違えば巨大なエネルギーとなります。

つぶやかれる内容は個人的な趣味から健康関連、芸能人の噂話や食品安全問題など多岐に渡り、中には公務員の腐敗といった政治的にデリケートな内容も投稿されるとのこと。

しかし自由につぶやき放題という訳はなく、中国全土で約200万人の検閲官 (世論分析官、またはネット秘密警察とも呼ばれる) 24時間体制で投稿を検閲しているのです。

中国共産党にとって政権維持が最重要課題であり、習近平体制が発足したも、ますます言論統制が強まっています。共産党政府に批判的なことを書いたり、社会秩序と国家利益を脅かす書き込みの場合は、ネットを追跡調査後、逮捕、裁判の上、ほぼ禁固刑になるという厳しい処罰。


この報道は、中国人民日報などと同じ、国営紙「新京報」がマル秘事項として数日前突然新聞ニュースのネタとして発表したので、即ユーザーの反発を買っていますが、この裏側には政府高官の主導権争いがあるとの噂です。



日本においては戦前の1940年代に「治安維持法」と云う悪法がありましが、北京政府は、今から70年前にさかのぼるような日本的法律で民衆を愚弄しているのです。

ロシアなどと同様、言論の自由のない国ほど恐ろしいものはありません。

ソルジェニーツィンの『収容所群島』が思い浮かびます。

何を喋っても基本的には「逮捕、監禁」されない自由な国、Japan はありがたい、ありがたい国・・・・・と云えるのかも?

このような検閲官の仕事は、実際は政府にとって都合の悪い事を削除して、国家ぐるみで証拠隠滅しているようなもの。 従って「灰色収入」「ワイロ」などの告発など一部は抹消されて闇に葬り去られています。 民衆の不平不満を抑え込み、第二の「天安門事件」を起こさせないように中国政府は躍起となっているようです。