キーンコーンカーンコーン
銀魂高校――
なんとも個性的な生徒が集うこの高校に、朝のチャイムが鳴り響いた。
着席の合図でもあるチャイムにより、大方のクラスの生徒達は席につき、先生がくるのを待つ。
だが…3年z組。そう札が下げられたこのクラスは違かった。
「お妙…じゃなかった、妙さぁーん!」
朝っぱらからウザイほどのラブラブ光線を出しながら、妙さんと呼ばれる可憐な女性…志村妙に飛びつこうとする近藤勲。
「あら、ゴリラのようなハエが飛んでいるわ」
そう笑顔でいいながら椅子を振り上げ…勢いよく近藤に振り下ろす。
妙に飛びつくどころか逆に魂が飛ばされそうな近藤。これでも、風紀委員の委員長。
ちなみに彼女はいない。
そして己の委員会の委員長のピンチにもさも自分は関係ないといった表情で寝ているのが、沖田総悟。
かっこいいっていうのに、ドSだからか彼女がいない。
最も、総悟からしたら、女=メス豚=いたぶる女。でしかなかったりするのだが。
「オイ、総悟。コレちょっと食ってみねェか?」
総悟に、たっぷりとマヨネーズが塗りたくられたおにぎりが差し出される。
その差出人の正体は、風紀委員副委員長の土方十四郎。
彼だってすごいかっこいいし、強いと思う。が、しかし…やっぱり彼女いない。
多分、その原因として、怖いとか土方がフっちゃうっていうのもあるんだろうけど、マヨが一番の原因だろう。
「定春、駄目だヨ!飼育小屋壊したら駄目アル!兎がいるネ!」
窓から校庭に向かって叫んでいるチャイナっぽい少女、神楽。
彼女はビン底眼鏡をかけているうえ、何か胡散臭い中国語で喋る留学生。
どこの国からっていうのはスルーの方向で行こう。
神楽が呼びかけているのは、銀魂高校?のペット。定春。
定春はこれまたでっかい犬なうえ凶暴で、神楽にしか懐かず、誰かれ構わず襲い掛かる。
もちろん、神楽だって最初から懐かれたわけではない。
定春は神楽にだって襲い掛かった。しかし、神楽の強靭な力が、定春などものともしなかったのだ。
最も…神楽は定春が最初、自分に襲い掛かってきたことなど知らなかったが。
他にもまだまだ濃い面々はいる。
学級委員長で長髪、全てを混沌に叩き込む桂小太郎。
顔は怖いけどとっても優しい屁怒呂くん。
とにかくいいバイトを探してる、サングラスが似合う通称マダオ、長谷川泰三。
そしてクラスのツッコミ役であり、妙の弟、志村新八。
新八は結構重要というか、レギュラー的人物なのだが地味なので紹介はこれぐらいでいいだろう。
とまぁこんな感じで濃い面々がそろう3zだが、一応普通の女子高生っぽい子もいるし、やっぱりいるのはクラスの情報網というか、どっから手に入れたのか分からない情報を口走る女子高生。
彼女もまたその一人で、早速今日の情報に級友たちと華を咲かせていた。その話題は…
「ねぇねぇ知ってる~?何かぁ、転校生来るらしいよ?」
転校生。一年に1回ぐらい来る転校生。第一印象が結構大事な転校生。
それが、この3zにくる。
濃い面々が多い3zだ、気の弱い子なら転入してきてすぐ転校か登校拒否なんじゃないだろうか。
「マジで?男?女?」
「男らしいよ!でもさっき、少し見た限りだと髪長かったっぽいから女かも~」
きゃっきゃと楽しそうに話す女子高生。そのうちの一人はハム子もとい公子。もう一人は阿音。阿音の後ろでリコーダーを吹いているのは百音だ。
この3人は、比較的普通の女子高生だと思う。
いや、極平凡な女子高生と比べたら、彼女たちも濃い方だとは思うのだが、3zの生徒と比べると…普通。
まぁ、ある程度は普通の生徒がいないとね。
ペタン。ペタン。
突如…というわけではないが、廊下からサンダルの音が聞こえてきた。音は3zの方向に向かってきているようだ。
それに気づいた一部の生徒たちが席につき、それのはずみで他の生徒達も席に着く。
ペタン。
3zの教室の前で、その足音はとまる。
ガラッ
「おはようございま~す」
入ってくるなり早々、朝の新鮮な空気とは似つかわないようななんとも気の抜けた声で挨拶をしてくる、教師、坂田銀八。
彼こそこの3zの担任教師であり、また3zの面々に負けないぐらい濃い人物だ。
教卓の上に名簿をおき、また自分の両手をついて楽な体勢をとる。
銀八が一息ついたのを見取ってか、早速公子が銀八に問うた。朝の話題にあがっていた、転校生のことだ。
「先生先生!転校生が来るって本当ですか?」
「随分と情報が早ェな。転校生が来るのは本当だ。長ったらしい前置きは面倒なんで、早速入ってきてもらうぞ」
面倒くさがりな銀八は、ダラダラと登場を長引かせるのが嫌なのか、早速教室のドアの向こうにいる転校生に入ってきてもらおうとする。
が、それは神楽によって静止される。
「待ってください先生!やっぱりもうちょっと前置きっぽいものしといた方がいいアル。その方が何か盛り上がるネ」
「盛り上がりとかどうだっていいんだよ。盛り上がるかどうかは結局転校生にかかってんの。それにホラ、転校生だってずっと廊下じゃ寒ィだろうが。いいな、登場させるぞ。おーい、入ってきていいぞー」
神楽によって一度は静止されたものの、銀八はさっさと自分の思い通りに進め、ドアの向こうの転校生に入ってくるよう促した。
ガラ…と教室のドア特有の音を響かせながら開くドア。一歩踏み込まれる足を見る限り、黒いズボンをはいているから男子のようだ。
二歩、三歩と転校生は歩みを進め…新たにクラスメイトとなる面々の前に姿を現した。
「あっ…!」
最初に目を見開いたのは神楽。最初に立ち上がったのは神楽。最初に声をあげたのも神楽。一番驚いたのもまた、神楽。
「転校してきた、神威くんだ。皆仲良くするように」
「よろしく」
桃色の少しはねた髪。肩から垂れる三つ編み。笑顔を絶やさないその表情…。
「な…何でここに…兄ちゃん!なんでここにいるアルか!?」
転校生、神威は…神楽の兄だった。
「………何でィ、コイツ」
神楽の兄ということも関係してかザワつきが大きい教室に、小さく不機嫌そうな声が呟かれた。
――続く
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