長野ヘリ墜落事故雑感 | PTD ~ Pilot To Dispatch ~

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ヒコーキオヤジのひとりごと
 空の話、ときどきタイのネタ…

 昨日、長野県の防災ヘリコプターが墜落した。

墜落現場
 現場の写真を見ると、上下逆さまに地面に
墜ちているし、機体の破壊状況がひどく、
姿勢制御を失い、かなりの速度で激突した
ように見受けられる。
 
 このヘリコプター、アメリカ製のB412EP
という機種で、原型となったB212は、米軍でも
UH-1Nという制式名で採用されており、
身近なところでは横田基地でも飛行している。
通常1基で十分なエンジンを敢えて2基搭載し、
通常の出力より低い馬力で2基の出力を
合わせて飛ぶ、エンジンに優しい機体と
なっている。万が一片方のエンジンが故障
しても、残ったエンジンで十分飛行ができる
設計になっており、このB212を改良した
今回のB412は、ローターを2枚から4枚に
増やし、効率よく飛行ができるようにされて
いた。

墜落した「アルプス」
 長野県が採用していたこのヘリは
さらに自動操縦機能を追加した「EP」と
呼ばれる型式で、冬場の運用に備えて
ローターに防氷装置も内蔵されていた。

 これだけの機体なので、機材トラブルは
あまり考えたくもないし、5,000時間を超える
機長の飛行時間を考え合わせると、操縦
ミスの線も考えにくい。
 
 当日は天候も穏やかだったが、山あいの
飛行は常に「山岳波」と呼ばれる乱気流との
遭遇に備えなければならない。地表近くで
この山岳波に揉まれて姿勢を崩すと、回復の
余裕がないのでかなり危険になる。
 
 今は何よりも生存者の発見と救助が
最優先課題なので、原因調査はその後で
十分だが、今日は西から天気が崩れてくる。
どうか2次災害だけは避け、一刻も早い
全員の収容を祈るばかりである。