調布の事故から一週間 (3) | PTD ~ Pilot To Dispatch ~

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ヒコーキオヤジのひとりごと
 空の話、ときどきタイのネタ…

 冒頭から変な喩で申し訳ないが、
死亡診断書の死因欄をご覧になった
ことのある方はご存知だと思う。
死因欄には 1)直接の死因 2)その
原因 3)2)の原因… と記入する
ようになっている。例えば糖尿病の人が
心不全による多臓器不全で亡くなった
ような場合には
  1)多臓器不全
  2)心不全
  3)糖尿病
などと記載される(らしい)
 
 昨日までの話で、「調布だから」とか
「暑かった」は理由にならない。そして、
「重量オーバー」説も新聞の詭弁である
ことがおわかりいただけたと思う。
 
 さて、それでは本当の事故原因は
一体何だったのだろうか…? 
 
 それを調べるために、今運輸安全
委員会が動いているわけである(笑) 
私のような素人に正確な原因など
わかるはずもなく… それでも
こうやっていろいろと書いているのは、
自分なりに事故について考えることに
よって、様々な安全へのヒントが
見つかることもあるし、自分の経験を
通じた推測により、自分の訓練内容
へのフィードバックを得られるからである。
そして、私の周りの人がマスコミを
鵜呑みにするのではなく、少しでも
真実を知ろうと思ってくださることを
願っていることも大きな理由のひとつ。
 
 航空機が墜落し、下の人を巻き込んで
しまった事実は事実。墜としてしまった以上、
私だって機長を庇うことはできない。
しかし、このままマスコミや警察の思う
ままに「機長が犯人」… でチャンチャンに
されてしまうのは、あまりにも航空事故
調査の理念から乖離した蛮行であることを
皆さんにわかって欲しいのである。
 
 冒頭の死亡診断書の話はここに繋がる。
今、警察とマスコミがやっていることは、
1)死因 のところだけを見て、「墜落:機長が
悪い」だけで終わらせようとしているような
ものである。では、なぜ機長は墜落して
しまったのか? を深く掘り下げなければ、
第2、第3の同様の事故が起こりかねない。

 亡くなったK機長、先行機に割り込みを
頼み、離陸前のエンジンランナップすら
やらずに離陸操作に入ったらしい。相当
時間が押していて、焦っていたのだろうか?
もし焦っていたとしたら、何故?
 
 当初彼は4人乗りの機体で飛ぶ予定
だったらしい。そこへ大島行きの話を
聞きつけた人間が(仮にA氏としておこう)
現われ、自分も乗せてほしいと頼んだとの
こと。最初K機長は断った。当たり前だ。
満席だったから。そうしたらこのA氏は、
K機長の会社の事実上の親会社である
エアロテックの社長にネジ込み、ゴリ押しで
社長から「乗せていけ」とK機長に命令
させてまで大島行きを実現させてしまった。
A氏としてみれば首尾よく遊覧ができる
わけだから万々歳だったろう。
 
 しかし、その結果機体を変えることに
なったK機長、大変なストレスだったこと
だろう。大島空港の着陸枠に遅れる
可能性も出たかもしれない。あるいは、
当初のお客さんが大島で時間を切られた
用件があったのかもしれない。 もし
そのような時間に追われる状況が発生
したいたとしたら、パイロットの心理と
して、1秒でも早く離陸したくなったの
かもしれない。
 
 (長くなるので一旦切ります。
   今日は2本立てで行きます)