さて、それでは、毎日新聞さんの
仰るように、離陸距離が本当に
滑走路より長かったのか?
下の図をご覧いただきたい。事故機と
同じパイパー社のPA-46-350Pの
マニュアルにあるパフォーマンス
チャートである。

事故当時の調布空港の気象条件は
RJTF 260200Z VRB02KT 9999 FEW030
SCT/// 34/22 Q1010
風は不特定の方向から約1m、気温は
34℃だった。この条件を用いて離陸距離を
計算してみた。ちなみに搭乗者の体重は、
先日書いた94kgよりもやや現実的にして、
5人全員が荷物込みで85kgという設定に
してある。これで離陸重量は4,200ポンド。
細かい手順の説明は省かせていただくが、
赤い線が気温34℃の際の必要離陸距離。
約1,800 feet。滑走路上の気温が気象観測
地点より高くて、仮に42℃だったとした場合、
必要な離陸距離は青い線で示したとおりに
なる。2,000 feet弱。

上の写真をご覧になっていただけると
お分かりいただけるだろうが、調布飛行場の
滑走路の全長は800m≒2,635 feetある。
離陸には十分な長さである。
当初の報道では、先行機がいて離陸の
順番が2番目だった事故機が、先行機の
機長にお願いして離陸の順番を割り込ませて
もらっていたとのこと。これは想像だが、
仮に先行機が滑走路の手前で既に待機して
いた場合、下の写真のように、事故機は
滑走路末端の一つ手前の誘導路から
滑走路に入ったことも考えられる。

(この写真では、誘導路の幅と飛行機の
大きさの関係をご理解いただけるよう、
滑走路端の接続誘導路に同縮尺の小型の
機体をはめ込み合成してある。これをご覧に
なっていただくと、先行機がこの位置にいた
場合、脇をすり抜けて離陸の順番を抜かす
ことは至難の業だと言うことがお分かり
いただけると思う)
滑走路の途中の誘導路から離陸を開始
することをインターセクション・テイクオフと
呼ぶが、滑走路の残距離が離陸に必要な
距離よりも長ければ、何ら問題はない離陸
操作である。その際の滑走路の距離は下の
写真にもあるように、2,036 feet。まだ少し
余裕がある。ただ、ギリギリになることは否めない。
事故の原因が重量オーバーではないだろうと
いうことはなんとなくお分かりいただけるのでは
ないかと思います。それでは何が事故の要因と
なっていったのか?拙い推測にはなりますが、
次回で締めたいと思います。
(また続く…)
※性能表以外の全ての写真はGoogle Earthさん
より拝借。