(本日2本目、続き)
いざ離陸を開始しても、なぜか
加速が悪い… エンジンが不調
だったのかもしれない。本来ならば
所定の離陸距離を滑走して浮か
なかったら直ちに離陸操作を中止し、
フルブレーキで滑走路内で停止
するべきだったのだが、K機長は
そのまま浮くことを選んでしまった。
時間のこともあっただろうし、もしか
したら、ここで離陸を止めたら
(この下手っぴめ!)と思われて
しまうと思ったのかもしれない。
ここが2) 1)の原因 である。
おそらく時間に追われていたので、
所定の離陸準備作業を怠ったこと、
あるいはエンジンの不調を察知して
いながらも機長としてのプライドや
名誉などのために、離陸を強行
してしまったことが墜落に繋がったの
かもしれない。
しかし、ここまででも調査は不十分。
3) 2)の原因… の究明こそが、
今後の同じような事例の発生を防ぐ
キーポイントになるのである。
公式な書面を待ちたいが、もしも
エアロテック社の社長がゴリ押しで
機長に追加の乗客を押し込んだので
あれば、それが 3) に当てはまる
本当の事故原因になるだろう。この
A氏さえ現れていなければ、K機長は
当初の予定通り小型の機体で、
時間に余裕を持って安全に離陸し、
伊豆大島まで飛んでいただろうからで
ある。
「判断は理論で詰める。そこに感情を
入れたら破綻する」という教訓があり、
私も仕事の時にはそう徹するように
心がけているのだが、今回の事故は
まさにその実例でもある。K機長は、
安全に飛べる自信がなかったら毅然と
してA氏の要請を断るべきだったのだ。
だがK機長自身も、社長だったとはいえ、
親会社の社長のゴリ押しである。無下に
突っぱねることができなかったかもしれない。
このあたりは狭い業界の中に求職者が
渦巻く日本の航空業界、K機長の苦渋の
決断も理解できないわけでもない。
しかしその結果として、自分も、そして下の
住民の未来までも消し去ってしまった。
本来ならばエアロテックの社長こそが、
「Aさん、今回は勘弁してよ」と言わなければ
ならなかったはずなのに…
そして、今回の事故に垣間見える
最大の病巣は、オーナー、運航受託会社、
運航会社と、幾重にも連なった組織関係の
中で、誰も責任を取る人がいないだろうと
思われることである。おそらく警察は
エアロテックも、A氏も、ベルハンドクラブも
訴追せず、亡くなったK機長だけを「犯人」に
して幕引きを謀るだろう。
大東亜戦争の時から全く変わっていない。
戦争の時も、今回の事故も、結局誰も責任を
取らずに、現場の人間が命を落とし、責任を
擦り付けられている。日本の社会の根本に
巣食う病巣が今回も姿を見せたに過ぎない。
もし本当にこの事故から学び、今後この
事例のような事故を再び引き起こさない
ようにするためには、
1) 直接の死因 だけではなく、
2) 1)の原因、
3) 2)の原因
まで踏み込まなければ、本当の事故原因の
究明にはならないのだ。そして、それぞれの
段階での責任を明確にしなければ、2)や3)の
立場にいる人間は平気で同じ過ちを繰り返す。
しかし、事故調査委員会よりも先に「犯人の
決め打ち」をしている警察が原因究明の
手がかりとなる機体の残骸を押さえてしまって
いる以上、それも望めまい。素人にいじり
壊されてから事故調査委員会に渡された
エンジンで、何がわかるというのだろう…
末筆になるが、亡くなられた3人の冥福を祈り、
怪我をした3人が1日でも早く回復して、今回の
事故の「真実」を証言してくれることを願いたい。
(長々とお付き合いありがとうございました。
この項終わり)