もちろん、４年前のことは忘れられない。
その前に、私は９・１１も経験している。
あの晩は、一人で夜勤についていた。
３・１１の時はちょうど強化訓練週間が
終わる週末で、同僚と軽口を叩きながら
後片付けをしている時だった。
飛行場を預かる一員になって20年。
インドネシアの津波も、全日空機の
ハイジャックも、なぜか大きな出来事の
時には勤務中だったり、スタンバイだったり。
いろいろと経験してきた。
だからこそ、「生き証人」ではないが、
若い後進たちに口を酸っぱくして言う
事がある。
「普段やっていることを、普段通りやりなさい。」
周りの雰囲気に煽られて舞い上がっては
いけない。普段から緊急事態に備えた
訓練やロールプレイングはたくさんやっている。
落ち着いていれば実力は発揮できると…
飛行機は一旦上がったら、着陸するか
墜落するしか地上に戻る術はない。
「いつでも降りて来い！ 滑走路は俺達が
死守しているから！」
滑走路を蹴って舞い上がる鉄の鳥達を
見上げながら心の中でそうつぶやく。