恐れぬ | くにまさのブログ

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     (『新・人間革命』第11巻より編集)

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           〈躍進〉 42

 

 

 四条金吾も、日蓮が捕らえられたことは既に知っていたにちがいない。師匠の一大事に、苦慮して対応を考えていたのであろう。知らせを受けると、兄弟四人が直ちに飛び出してきた。裸足のままである。

 

 日蓮は、法華経のために命を奉ることができる喜びを、諄々と語った。処刑の瞬間まで、弟子のために法を説き、指導し続けようとする師であった。

 

 殉難を恐れぬ日蓮の言葉に、四条金吾も、勇気を奮い起こした。自分も、何も恐れまいと思った。

 

  四条金吾は、日蓮の乗った馬の轡(くつわ)にすがるようにして、ともに歩み始めた。もし、この師が死ぬならば、自分も、ともに殉ずる覚悟で竜の口までついて行ったのである。

 

 しばらく行くと、兵士たちが日蓮を取り囲み、騒然とし始めた。

 

 ここで処刑しようというのである。

 

 「いよいよお別れの時でございます」

 剛毅な四条金吾も、こう言うと声をあげて泣いた。

 

 すると、日蓮は毅然として言った。

 

 「なんという不覚の殿方か! こんな喜びはないではないか。笑いなさい

 

  その叱咤は、限りなく力強く、それでいて、優しく包み込むような慈悲の響きがあった。

 

  ほどなく処刑の準備が整い、日蓮は、頸の座にすえられた。    

しかし、悠然と端座した姿には、威風が漂っていた。

 

  兵士の一人が、太刀を抜いた。頸を斬らんとした、まさにその時である。

 江の島の方向から、漆黒の闇のなかを、月のように光る物が現れた。それは鞠(まり)のようでもあった。そして、東南から北西の方角に光り渡った。

 

 兵士たちの顔が光に映し出された。どの顔も、恐怖に引きつっていた。

 

 太刀を手にしていた兵士は、目がくらみ、その場で倒れ伏した。一町(約百九メートル)ほども逃げ去った者もいれば、馬から下りてかしこまる者もいた。また、馬の上でうずくまっている者もいた。

 

 皆、怖じけづき、もはや頸を斬る気など、全く失せてしまった。