(『新・人間革命』第8巻より編集)
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〈布陣〉 41
伸一は、さらに、野川に尋ねた。
「ハブの問題以外には、何がありますか」
「台風です。なにしろ、奄美は”台風銀座”といわれているぐらいですから、毎年、甚大な被害を受けています」
「これも、さまざまな保障を考えるなど、政治の次元で対応していくべきことも多いが、問題解決の根本となるのは、みんなの祈りの一念だよ。
一念は大宇宙を包むと教えているのが仏法だ。
人の一念が変われば、衆生世間が変わり、国土世間も変わる(世間とは、違いの意味。衆生の生命に十界の違いがあることで、国土世間は、衆生の住む国土に十界の違いがあること)。
それが依正不二(依報と正報が二にして不二であること。正報:生命活動を営む主体をいい、その身がよりどころとする環境・国土が依報)であり、
一念三千の原理(衆生の一念に三千の諸法が具わること。瞬間瞬間に生起する衆生の心を「一念」といい、現象世界の全体を「三千」という数で表す)だ。
だから、学会員が増え、みんなが題目を唱えるようになれば、どんな環境も変えていくことができる。
すべては人の一念から始まる。
たとえば、台風で吹き飛ばされない家はどんな家か、被害の少ない農作物は何かなどの研究や工夫も、一念から生まれる。
さらに、行政を動かして行くのも一念だよ。
自分のいるところを常寂光土とし、幸福と平和の天地にしていくことが、私たちの使命だ。
私は、奄美の同志には、その先駆となってもらいたいんです」
伸一は、ここから、壮年の班長大会の会場になっている立安寺に向かった。
立安寺は昭和三十四年の十二月に、学会によって建立寄進された寺であった。