(『新・人間革命』第7巻より編集)
44
〈萌芽〉 17
その時、伸一は、ベッドルームから、こちらを覗いている四人の男の子がいることに気づいた。
クワノ家の子どもたちである。
「こちらへ、いらっしゃい。カムヒア」
伸一が呼ぶと、・・・ 。
「お土産をあげたいが、今日は持ってこなかったので、お小遣いをあげようね」
伸一は、財布を取り出すと、「いつも、お留守番ありがとう」と言いながら、一人に一ドルずつ手渡していった。
「しっかり勉強してね」
やがて、この子どもたちの時代が来ると思うと、励ましに力がこもった。
帰り際に、伸一は、パートと握手を交わした。
「私たちは、友達になりましょう。またお会いする日を楽しみにしています」
パートは、笑みを浮かべて、強く伸一の手を握り締めた。それから一年足らずのうちに、彼は入会したのである。
クワノの家から帰る伸一たちを、車で送ってくれたのは、女子部のチカコ・ハヤシダであった。
彼女は、ロサンゼルス郡立病院に勤める看護師で、肺疾患の病棟の夜間業務を任されていたが、それ自体が信仰の実証であった。
ハヤシダは、ワシントン州生まれの日系三世であった。
戦後は日本に引き揚げ、熊本で暮らした。そして、高校から看護学校をに進み、看護師になり、実兄のいるアメリカに渡った。
アメリカ生まれとはいっても、英語がまるでわからない。
彼女は、ロサンゼルスの日本人病院で、看護師の手伝いとして働いた。その病院に勤めていた、メンバーのカズコ・エリックから、初めて仏法の話を聞かされたのである。
人間が生きる上で、宗教は必要だと考えていたハヤシダは、素直に入会を決意した。