(『新・人間革命』第7巻より編集)
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〈文化の華〉 19
そして、伸一は、こう語って話を結んだ。
「今日は私ども理事室のメンバーは、皆さんが一生懸命に演奏され、歌われるのを、ゆっくり鑑賞させていただきました。大変にありがとうございました。
そこで、最後に、理事室を代表して、私が学会歌の指揮を執りまして、失礼させていただきます」
歓声と大拍手が起こった。
「新世紀の歌」の前奏が響き、皆の手を打つ手拍子がこだました。
大鷲が大空を舞うかのような、伸一の勇壮な指揮が始まった。
最大の歓喜にあふれた大合唱となった。伸一の舞に合わせ、皆の歌声も、心も、完全に一つに溶け合っていた。
・・・・。
”キューバ危機”以来、山本伸一の胸には、一刻も早く、世界平和の道を開かねばならないという、強い思いが渦巻いていた。
しかし、彼は、はやる心を抑え、一歩一歩、堅実に、民衆の大地に根差した大哲学運動の展開に、最大の力を注いでいた。
伸一には、時流の変化で消え去る、砂上の楼閣のごとき平和運動を踏襲するつもりはなかった。
彼は、戦争の絶滅という人類史の課題に、真っ向から挑むために、五十年、百年後の平和の堅固な礎を築こうとしていたのである。
十一月二十七日の、十一月度の本部幹部会を間近に控えた日の夜のことであった。
伸一が、理事らと聖教新聞社で打ち合わせしていると、普段はもの静かな統監部長の山際洋が、意気を荒げて駆け込んできた。
「先生! ついに達成しました。学会は三百万世帯を達成したんです!」
「やりましたね、とうとう、やりましたね・・・」
皆、躍り上がらんばかりの喜びようである。ここにいる誰もが伸一と心を一つにして、この日、この時、この瞬間をめざして、力の限り走り抜いてきたのだ。
・・・。
それを、約一年四カ月以上も早く、達成したのである。