(『新・人間革命』第6巻より編集)
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〈遠路〉 20
白山は、拍子抜けしたような目で伸一を見た。
「自分の子どもだから、信心に理解を示すだろうと考えるのは、実は親の甘えです。
ましてや、成人していれば、子どもさんたちも、それぞれ自分の考えをもって生きているのだから、その考え方、生き方を尊重していくべきです。
そのうえで、本当に信心をさせたいのならば、あなた自身が、生活のうえでも、あるいは人格のうえでも、信心のすばらしさを示しきっていくことです。
つまり、子どもたちが心から誇りに思い、尊敬する父親になることです。
家族というのは、最も身近にいるだけに、ごまかしは通じません。一番厳しい批評家でもあります。
これは婦人にありがちなケースですが、外では一生懸命に学会活動していても、家では愚痴をこぼし、同志を批判していれば、当然、子どもは、信心しようとは思いません。
ともかく、子どもさんたちの幸せを、本気になって祈り念じていくならば、その心は必ず通じ、いつか信心に目覚める時が来ます。
それに、あなたが真剣に励んでいくなら、ご家族も、その功徳、福運によって守られていきます。
だから、決して焦る必要はありません。ましてや信心を無理強いする必要は全くありません」
白山は、大きく頷いた。
伸一は、それから、白山の隣にいた、川喜多正男の妻の孝子に語りかけた。
「あなたのお母さんと、出発前に、日本でお会いいたしました。お母さんは元気で頑張っておいでです。
また、娘さんのパキスタンでの暮らしに、心を砕いておられましたよ。お母さんのお話では、あなたも学会に入会されているとのことですが・・・」