(『新・人間革命』第4巻より編集)
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〈春嵐〉 15
支部大会が始まり、やがて、会長の伸一の講演となった。
「私の話といっても、学会員の皆さんが、御本尊を持って幸福になることーこれに尽きるんです。
その一つのお手本が、この島津支部長です。一度は、死にかかった方です。にもかかわらず、こんなに元気になり、皆さんの面倒を見る責任ある立場になった。
この厳然たる事実は、誰も否定できません。
どうか、その姿をお手本として、御本尊の功力は絶対であるとの大確信で、信心に励んでください」
山本伸一が支部長の島津達夫について語ると、島津は立ち上がり、参加者に深く礼をした。
大拍手が起こった。
体験を積んだ人は強い。その存在は、百万言に勝る説得力がある。ゆえに、労苦はかけがえのない、人間としての財産になる。
この後、伸一が話を続けようとした時、数百人の人が、名残惜しそうに立ち上がった。
列車の時間の都合で、先に帰らなければならない、遠方のメンバーである。伸一は事前に島津から、それを聞いていた。
周囲を気遣いながら席を立つメンバーに向かって、彼はマイクを握って呼びかけた。
「帰りの列車の時間ですね。今日は、本当に遠くから、ご苦労様でした。どうか気をつけてお帰りください。
家族の皆さんにも、よろしく。健闘を祈ります。さあ、みんなで、拍手を送りましょう」
彼は、こう語ると、自ら拍手を送った。それに呼応して、会場に拍手が響き渡った。
帰る友も元気に手を振り、おじぎをし、ある人は残った同志と握手を交わし、会場を後にした。