(『新・人間革命』第1巻より編集)
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〈開拓者〉 19
座談会の後、伸一は、この日、任命になった全幹部を別室に呼んだ。カズコ・エリックは、横を向いたまま、伸一の前に座っていた。
エリックの人事は、皆で慎重に検討した結果であった。エリックのこれまでの活躍や一途な情熱は、誰もが評価していた。
しかし、組織が発展するには、皆の調和を図り、一人ひとりの力を最高に生かし、組織の総合力を高めていくことが大事な要件となる。
また、リーダーには、良識や冷静さ、緻密さも求められる。それらを考え合わせると、婦人部長としてはキヨコ・クワノの方がふさわしいのではないかというのが、一行の結論であった。
ロサンゼルスの発展の鍵は、どこまでもキヨコ・クワノとカズコ・エリックの団結にあったといえる。
組織の力というのは、人と人の組み合わせによって決まると言ってよい。むしろ、タイプも、個性も、考え方も違う幹部が力を合わせることによって、多種多様な人材を育み、いかなる問題にも対処できる、幅の広い人間組織ができあがるのである。
つまり、人の和こそが組織の強さにほかならない。
この人事には、二人が欠けている者を補い合えば、最も強力な布陣となるとの期待が込められていた。
更に、これまで、中心的な立場で戦い、力もあるエリックが地区部長になることによって、全地区部長の自覚を高めたいとの思いもあったのである。
伸一は、厳しい口調で言った。