9ヵ月待ち、一年待ちというお店があると聞いて、ミシュランとか、
そういうものではなく、それがうなぎのお店というので、鰻くらいなら、
という軽い気持ちでお店に電話し予約したのが、ほぼ9ヵ月前。
17時少し前。漸くその日が来た池袋のうなぎのお店『かぶと』さんへ。
今か今かと店前に群がる予約客も、同じく長く待ち侘びた同志のような
感覚で、9ヵ月待ったことを称え合うよう笑みに満ち溢れてました。
私も日経Webのコラムかなんかで見て知った訳ですが、うなぎが美味しい
のは確かですが、お店でそんな違いってあるのか、いったい何が魅了させて
いるのか。熱狂させているのか。そんな興味を持って来店するに至りました。
一杯目のくくみ酒(純米)は、これは日本酒らしからぬ水のような癖の無さ
で、とてもさっぱりしていて、鰻にはとても合う銘酒だなと思いました。
カウンターと2つのテーブル席で全部で15席しかない小さなお店は、
予め決められた席へ次々に通されます。接客はすべて名前で呼ばれて
の案内で、特別な場所に来たなと実感させられます。
初めてのお客さんへのルールとしては、天然うなぎ(5月~12月入荷)は、
食べられない。注文できない。なお、支払いも養殖の2.5倍くらいになりますし、
1回目の来店は養殖だけというのは確かに納得できました。。。
あと、メニューはあって無きが如しで、お腹のすき具合をマスターに伝えて、
基本お任せとなります。15席2クールで商売しているので、例えば、うな重
だけお願いします。って訳にはいかない雰囲気ですし、苦手だから、
キモなどの串を食べないって我がままは初来店者には到底難しいようでした。
次々と串焼きが出されてきます。正直ちょっと癖が強いなと感じるものも
ありましたが、焼き加減が絶妙で、とても丁寧に時間を掛けて打った串を
きちんと焼いて正しく提供されますので、鰻各部位の串焼きとしては
素晴らしく美味しい串料理で、この店が名店とされる所以だと感じました。
ただこれを1年待って食べるほどでは無いようには思います。熱狂的な
お客さん側は、もう少し冷静になっていいのかなと。尚、串焼きでしたら、
大阪梅田に『寝床』ってお店が安くて美味しくて、東京でしたら焼き方は
店員さんによりけりですが『新宿かぶと』でも気軽に安く食べられます。
なお串の原料となる、皮や骨、肝などは、普通のうなぎ屋さんでは
捨てられるところで、実際はただ同然の仕入れ値なよう。こちらの店も、
他店にお願いし材料取り寄せているそう。他店がなぜ捨てるかというと、
串を仕込む手間が半端なく大変だからというのが理由なんだそうで、
こちらでも、夜営業2クール分の仕込みを午前中から夕方に掛けて
頑張って仕込んでいるとのことでした。うなぎの美味しさを隅々まで
伝えたいという気持ちが強く感じられる逸品ではありました。