毎年1月の最終日曜日は「世界ハンセン病の日」 | スクール・ダイバーシティ

スクール・ダイバーシティ

成蹊高校生徒会の1パートとして活動しています。あらゆる多様性に気づく繊細さ、すべての多様性を受け止める寛容さ、疎外や差別とは対極にあるこんな価値観を少しでも広く共有したいと思って活動しています。

 ここのところ、ハンセン病関連のトピックがしばしばメディアに取り上げられていたことに気づいていた人も少なくないのではないでしょうか。それは、この「世界ハンセン病の日」が近かったからだと思います。
ハンセン病についてはこのブログでも何回かふれてきましたが、今回も、この機会にあらためて、ということで、まずは、以前ここで取り上げた、マツコ・デラックスさんのコメントを再度紹介しておこうと思います。それは「THINK NOW ハンセン病」というプロジェクトにマツコさんが寄せたコメントなのですが、彼女の影響力をふまえるとこのコメントの存在はとても大きいと思うからです。こんな感じです。

 「もし、本当の意味でハンセン病への差別や偏見がなくなったら、この先本当に、差別や偏見をゼロにするきっかけになるんじゃないかと思っています。(中略)いまネットを開けば、本当は胸に秘めていなければいけない人に対する憎悪を、簡単に書きこめて世の中に見せることができてしまうことができる状況がある。これからそれが助長していくと、ますます差別や偏見が生まれやすい状況ができてしまう気がしていて。そんな中で今一度、ハンセン病について振り返る・知るという行為が、何か、光明になるんじゃないかっていう思いがしています。」
http://ameblo.jp/sksd14/entry-12068765869.html

*さっそく「世界ハンセン病の日」関連のイベントです。この日に、「ハンセン病文学」をテーマに「知的書評合戦ビブリオバトル」が開催されました。会場には、小説『あん』の作者、ドリアン助川さん、卒業論文でハンセン病文学者・北條民雄を取り上げたこともあるタレントで作家の中江有里さん、そして、ハンセン病回復者の森元美代治さんが招かれ、以下の5作品が取り上げられました。http://leprosy.jp/

近藤宏一『闇を光に ハンセン病を生きて』(みすず書房)
石井光太『蛍の森』(新潮社)
宮里良子『生まれてはならない子として』(毎日新聞社)
ドリアン助川『あん』(ポプラ社)
遠藤周作『わたしが・棄てた・女』(講談社)

 成蹊高校の図書室には「ダイバーシティ・コーナー」が設けられていて、随時、図書が追加されています。『あん』以外はまだ並んでいないので、さっそく。


*「記事」というには長いけど、参考文献もたくさん上がっていて、ハンセン病について深めていこうとするならぴったりの文章だと思います。批評家松岡正剛さんが木下晋さんの画集「祈りの心」(求龍堂2012)を紹介した文章です―というだけではぜんぜん十分でないような突き刺さるような文章と、そして、何よりもそこに貼られている木下さんの作品の数々、ハンセン病を直視して受け止め切った作品にふれてみてください。http://1000ya.isis.ne.jp/1524.html

*あの「もののけ姫」にハンセン病患者が描かれているということは、以前から指摘されてはいましたが、宮崎駿監督自身があの作品にハンセン病患者を描き込んだということをはじめて公言しました。あの包帯だらけの人たちのことです。
http://www.huffingtonpost.jp/2016/01/28/miyazakihayao_n_9105072.html

*宮崎監督の文章、ハンセン病療養施設、多磨全生園とハンセン病について書いた文章からこんな一節を引いておきます。

「ハンセン病については常識程度に知っていた。感染力はとても弱く、もはや不治でもなく、政府の患者隔離政策は世間に恐怖と偏見を植え付けただけで、病気の根絶にはまったく寄与しなかったことなど。しかし、生け垣の中を直視する覚悟と資格が自分にあるとは思えなかった。好奇の対象にするのは無礼すぎる。」http://yaplog.jp/irohibi/archive/1788

 宮崎監督は今回、この段階にいるすべての人たち、すなわち、良心的だけどそれゆえ動けないすべての人たちに、次の一歩を促したのだと思います。では、また。

ビブリオ