長い生存確認 | 交心空間

交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇

「生きとる?」
 夕食を終えて一服していると、向こうの部屋に置いていた携帯電話が鳴って
いるのに気づいた。飛んでいき着信相手を見ずに電話に出ると、年輩女性の声
でいきなり生死を問われた。
「はい?……どちらさまですか?」
「○○よ。元気にしとる」
「ああ、元気だよ。そっちはどう?……」


 学生時代にアマチュアバンドのコンサートを企画していたころ、バンドをや
っていた女性だった。彼女とはその後も食事をしたり電話やメールで話したり、
お互いの近況を語り合ってきた仲だ。
 ところが四十代になって彼女が体調を崩した。私にできたといえば、電話で
励ますぐらいだったが、それもいつしか途絶えて……五年、いやもっと経つだ
ろう。
「バウンドテニスで、スポーツセンターにおるんじゃけど、始まるまでまだ時
間があるし、どうしよるか思ォて」
「凄いじゃん。ちゃんと生き返っとるじゃん」
「ハハハ……まあねえ……一汗かいたら、また電話するけえ」
「分かった。待ってる」


 改めてかかってきた電話は、復活話を皮切りに、以前と変わりなく家族や仕
事やたわいない話の積み重ね……。相変わらず「何事にも熱心に取り組もう」
とする彼女の姿があった。


 ──「もう」というか「まだ」と捉えるか。五十を一歩過ぎた者同士、気楽
にやりたいが、そうもいかない年相応の意気込みもある。何はともあれ、元気
でいればそれでいいじゃないか。