『別れの情景』 作・坂本 博 語り・岩崎有子 音楽・THEN
M1 ラララ…… ラララ……
あなたは私にいつも言ってた
覚えているでしょうか
男は後ろは振り向かない
男はいつか旅立つもの
そんなあなたに振り回されて
私はいつだって淋しい思い
やっとあなたの
優しさの数々
気づきかけたら
別れがきてた
SE 雨の音
女 「雨……雨の朝だった……別れの言葉はあなたから。突然ね。
分かってたけど……それから、何にも言わず頷くわ…………あな
たに出逢ったのは一年半前。私がコーヒーショップでアルバイト
を始めて一週間が経ったとき……大きな荷物とスケッチブックを
抱えて、あなたが店に入ってきた」
SE カランコロンとドアの開閉。
女 「いらっしゃいませ」
男 「この店で、いやいや、世界中で一番うまーいコーヒーいれて」
女 「え?」
男 「今朝、あの山から下りてきて……山ん中じゃインスタントで
我慢してたからな。ぅんーと美味いの頼むよ」
女 「はい……いい絵、描けました?」
男 「絵?」
女 「だって、スケッチブックとか絵の具とか。見れば分かります」
男 「ァハハ、そうか……あの山に一週間もこもって描いてたけど。
どうも思うように描けなくって……ァ、そうだ。ちょっとこれ見
てよ。思ったこと何でもいいから聞かせて」
M2 (イントロ)
女 「でも私、絵のことなんて分からないから……」
M2 初めてあなたを見たのは春でした
若葉の匂う五月でした
よく覚えています
初めてあなたとかわした言葉
そして 初めてのデート
輝くあなたを見たのは秋でした
枯葉の舞い散る九月でした
ボクは目を伏せました
初めて見たあなたの楽しそうな瞳
そして 初めてのくちづけ
女 「楽しかったわ……旅をしながら絵を描いていたあなたが、こ
の町に来て半年。映画を観たり、テニスをしたり……そんなとき
あなたは、海へ誘ってくれた」
M3 (インストで海のイメージ)
女 「(M3をBGMに)浜辺を走る私。相変わらず絵のことしか
頭にないあなたは、キャンパスに海を刻み込んでいたわ……秋の
海はどことなく淋しいけど、君がいれば明るく見えるよって言い
ながら、久し振りに思った通りの絵が描けそうだって、喜んでた
わね……あなたの好きな色、それは白! だから、あなたへのプ
レゼントは真っ白なベスト!……ァハ、ちょっと大き過ぎたので、
少し太るかなんて、私のサンドイッチまで食べてしまったわ」
SE 波の音、FI
M3 (インスト、アップして終わり)
SE 波の音が残る
女 「(M3終わって)……そして、夕暮れ……あなたは言ったわ
……一緒に暮らそうって」
SE 波の音、FO