やめておけ
これいじょうすすんじゃいけない
まるでブレーキオイルの切れた車のように。
アクセルペダルの戻らない故障車のように彼はのめり込む。
気づいたときには。
ほんのお情けでしかなかった僅かな仕事をすべて在宅にしていた。
毎日のように。
訪ねてくれるひとを待つだけの狂気と幸福の混ぜこぜな時間。
息子にも。
気づかれている。
どうしたらいいのか。
わからない。
ことばにできない感情に支配されたまま。
はじめは。
ためらいがちに触れてきた細い指。
あたりまえのように。
彼は。
恐怖交じりに。
何度目かわからない。
くちづけを。
待っている。
お互いに。
それ以上を見通しながら。
ゆるゆると。
決断を引き伸ばして。
ずっと。
微熱が続いているような夢の中を浮遊し続けていた。