同居生活スタート | あしたもいっしょ

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生きてりゃ誰もが通る道「わたし編」

一緒に住もう、と電話をしてから、わずか2日後に引っ越してきた父と母。

父は帰ってきたことがよっぽど嬉しかったのか、子供のようにはしゃぎ、
あちこちに電話して報告していた。

母は人には知られずにひっそりと逝きたいと思っていたし、それを父にも言っていたが、
認知症が進んだせいなのか、そんなことはお構いなしだった。

母は本当に末期癌なのか、と思うほど終活に忙しく走り回っている。

母は自分が動けるうちにと思ったのだろう。
越してきてからは、保険、銀行、不動産などの手続きを優先して動いていた。

金曜日に引っ越してきて翌週の月曜日には、お願いしていたお隣の先生の病院にも行った。
すでに前の病院から情報が届いており、院長室で現在の状態、これから先のことなど説明を受けた。

前の病院の診断と同じことを言われ、わかっていてもショックだった。

私の主人は、製薬会社の友人に連絡しながら、治療法を模索していた。
絶対に諦めない、と何度も何度も口にした。



引っ越してきてから1週間ほど経った頃、母がポツリと言った。

「前の家の庭に残してきたカサブランカ・・・。持ってきたら良かったな。」

そのカサブランカの花は、20年以上前、私が母の日にプレゼントしたものを、
母は大切に育て、毎年、見事な花を咲かせていたものだ。

「今から取りに行こうか?」

「え?いいの?大変じゃない?」

「行こう!」

小1時間ほど車を走らせ、前の家へ行き、カサブランカを掘り起こした。

母がずっと大事にしてくれていた私との絆のようで、嬉しく悲しかった。


そのカサブランカは、私のとても小さな庭で、今年も見事な花を咲かせてくれた。