観劇                 

           Jonas KarlssonBokmessa           町の演劇鑑賞会

 

ストックホルムでの単身赴任が30年にもなって夫婦関係も不安定になっていた時、週末に妻をストックホルムに呼び寄せ演劇鑑賞などをしたことがある。妻はそれまで観劇の経験がなく、興味もなかったけれど、観劇とは映画と違って俳優の生の姿を見ることであり、その出会いを仕事仲間にも自慢できることがわかり誘えば都合を合わせてくれるようになった。

Maxim劇場ではLena Nymanの喜劇や、私の配達を手伝ってくれたJonas Karlssonの演劇など観賞した。出し物は大体3時間くらい、途中で30分ほどの休憩があるが、古い劇場のロビーなどでは、しばし喫茶やワインを楽しむ人で混雑する。中には年代物の服装の人もいて、その雰囲気は悪いものではない。昔の演劇を楽しめた人々の姿を想像することができた。

若い頃、名古屋駅前の毎日新聞社が文化人の講演会を開いてくれ、仕事の後、聞きに行ったことがある。その日の講演者は瀬戸内晴美、司馬遼太郎そして小林秀雄。今思うと大変豪華な顔ぶれだ。しかし内容は全く覚えていないのに、小林秀雄が酔っ払って話しをしていて真面目に聞く気がしなかった。友人の杉守君が文学座の公演に誘ってくれたことがある。そして杉村春子の “女の一生”や“欲望という名の電車”を見ることができた。また、“白鳥の湖”を見た時は、前から3列目に座っていたので、踊子が飛び上がり着床すると、ドスンと音のすることが珍しいものを見た時の様で楽しかった。“白鳥の湖”は後年、本場ボリショイバレー団の舞をモスクワで、アメリカ娘たちの観光団と一緒に観賞もした。

名古屋鶴舞の市公会堂で労音が“Little peggy  March”のコンサートを開くことを知り、労音事務所でポスターを貰い会社の掲示板に張り出したことがある。仲間が10人程参加、自分も妻と一緒に、娘を親に預け見に行き、有名タレントの実演を楽しんだ。しかし、後日総務課長から労音行事の無断掲示を注意されてしまった。労音というのは労働組合の全国組織の一部だということを全く気にしていなかった。その総務課長は後年アメリカ本社の社長に栄転、また40年ぶり昔の上司、同僚と再会、食事会の折には、わざわざ参加してくれ感激した。

私の今住む町は人口1万くらいのスウェーデンの田舎町。映画館も閉鎖されて久しい。この町で観劇できるのは、街の素人劇団が演ずる夏の屋外劇か、年始の町の生活を茶化した恒例の演劇出し物だ。知っているスーパーのレジ店員や診療所の看護婦さんなどが熱演してくれ、年寄りにも人気がある。コロナの今年はこんな楽しみもすべてなくなってしまった。ワクチンが効力を発揮して、早く普通の生活ができるよう戻してほしいものだ。