皆さんは「捕虫器(ライトトラップ)」というものを知っていますか?

飲食店や工場,スーパーなどの施設で見ることができます。

こんなやつ↓です。



害虫・害獣から街を守るPCOの調査日記-捕虫器


 昆虫の行動の一つに「光走性(ひかりそうせい)」というものがあります。
(私が高校生のころは,「走光性」と習っていましたが,今では光走性と習います)


「走性」・・・刺激に対する一方向性(近づくか遠ざかるか)の行動


刺激の方向に近づく場合を「正の走性」,

        遠ざかる場合を「負の走性」といいます


走性の種類としては,刺激の種類により

化学走性,光走性,重力走性,水流走性などがあります。



この行動は生得的な行動で,その生物の生存に対して有利に働くように
行動が生まれながらにプログラムされています。


例えば,ミミズは負の光走性,正の重力走性を示します。
これは,生存に不利な地中から出てしまわないようにですね。



昆虫の中には,正の光走性を示すものがあります
実験の結果から,特に紫外線(波長360nm前後)に強く誘引されることが知られています。



この性質を利用して室内等に入ってきた昆虫(特に飛翔昆虫)を誘引し
粘着シートで捕獲・駆除するのが,ライトトラップです。


ですから,ライトトラップのランプには,光の波長域の一部である紫外線領域を
通常のランプより多く放出するUVランプが使用されています。


 紫外線は可視光とは違い人間の目には見えません。
しかし,前記したように,紫外線は多くの昆虫にとって非常に魅力的な光です。


そのため,ライトトラップの光は昼間であっても十分な誘因効果を備えています。

つまり,ライトトラップは昆虫を「常に誘因」しているのです。


このことを忘れてライトトラップを設置してしまうと,

駆除どころかむしろ昆虫を呼び寄せてしまうことになります。



次の写真は,あるハエの大量侵入に悩まされていた厨房内に設置されていたライトトラップです。



害虫・害獣から街を守るPCOの調査日記-入り口付近に捕虫器

厨房の入り口に設置されています。



同定の結果,大量に侵入してきているハエは土壌中から発生する種類のコバエであることがわかりましたが,厨房内に植物などなく,どこにも土壌はありません。


おそらく,建物周辺の草地で発生したハエが,建物の何かに誘引されているのだろうと推測されました。


確かに室内用のライトでも誘因はされますが(普通のランプにも紫外線は多少含まれます),それにしても数が多すぎます。


原因を求めて調査している時に,厨房入り口にあるライトトラップに目が行きました。


もしや!!と思い再度暗くなってから訪問してみました。



すると・・・・



害虫・害獣から街を守るPCOの調査日記-漏れた光

窓からライトトラップの光がたくさん漏れています。


遠く離れても十分に光を確認することができました。



これでは外にいるハエを誘引してしまいます。
もちろんハエだけでなくその他の昆虫も誘因することになります。


きっと,ライトトラップに誘引された昆虫が,ドアの開け閉めの際や窓の隙間・通風口などから風の出入とともに厨房内に侵入してきているのでしょう。



この厨房では,発生ししているハエの駆除・防除のための薬剤散布と同時に


①ライトトラップの設置位置を変える
②ランプの光が外に漏れないように遮光フィルムを窓に貼る
③光が外に漏れないようカバーのついたライトトラップに変更する


の3つの対策を提示させて頂き,依頼主様は②を選択されました。


その後のお話では,厨房への侵入がグッと減ったようです。


このように,建物の外から見えるような所にライトトラップを設置してしまうと.
外部から内部へ昆虫を呼び込んでしまうことになります


せっかくのライトトラップです。正しく設置して有効に使いたいですよね。


ライトトラップを設置されている皆さん,一度設置場所を確認してみましょう。
案外,光が外に漏れているかもしれませんよ。



株式会社エスケーシステム では,問題となっている害虫の種類を同定し

 その生態にあわせて有効な対策方法の提示をさせていただいています。