マージャリー・クランドン その十:世界は超常現象を曖昧なままにしておきたい | Siyohです

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音楽とスピリチュアルに生きる、冨山詩曜という人間のブログです

ウォルターと歯科医の右親指の指紋はかなり似通っているが、違う点があるというソログッドの主張を詳しく紹介しましょう。これがソログッドのプロシーディングにある、二人の右手親指のコア部分の違いを表す写真です。

コアというのは指紋の中心点のことで、渦を巻いた指紋なら渦の中心がコアと呼ばれています。これは左がウォルター、右が歯科医のもので、歯科医の名前は当時伏せられていてXと呼ばれていました。この写真はネガで、隆起部分(実際の指紋では凹んんでいる部分)に番号が振られています。下の説明でソログッドは、左の指紋の5の隆起を囲む溝部分が、実際のポジの指紋ではステープルの隆起線になると述べています。ステープルというのはホッチキスの針のような形状をした、2つのものを留めるためのものです。ウォルターの指紋をそのまま見たとしたら、隆起線がホッチキスの針がたくさんあるような形で波打っていることを言いたいのだと思います。

それに対して右のX氏の指紋では、4と5の隆起部分は繋がっていて、その間の溝(実際の指紋では隆起線)がロッド、つまり棒状だと書いています。この写真はとても潰れていたのをPhotoshopのシャドウ・ハイライトを自動で適用して補正したのですが、それでもソログッドのいう、ステープルとロッドの違いは全然確認できません。でもX氏の4と5が繋がっていて、ウォルターはそうでないのはわかります。こんなイラストもあります。

上の点線で描いてあるのが、ウォルターのステープルを表現したもの。真ん中のXは歯科医のロッド状の隆起線を表しています。ここでソログッドは、ウォルターの隆起線は途中から分かれているけれど、Xのものは二本の線が続いているという違いも述べています。当時のマージャリー側の人達は、カミンズ博士の鑑定は写真鑑定だったし、証拠のすり替えもあったかもしれない。つまりウォルターと歯科医の指紋はやはり違うのだと考えていました。そこに大打撃を与えたのが、1935年のレポートです。

 

このレポートでカミンズ博士は、実際のワックスを5つ見ました。そしてこのときは、ソログッドの言っている違いの部分も詳細に見ています。その結果彼は、新しく得られたウォルターのものであるはずの指紋のコアの、ソログッドの指摘している部分は、すべて「ロッド」だったと書いているのです!!!

 

さて、何が起きているのでしょう。ソログッドがステープルとロッドを見誤った? しかしプロシーディングには査読があります。上記のステープルとロッドの違いを示す写真。今回手に入った写真では全くわかりませんが、オリジナルの写真ではその違いが見えていて、ソログッドだけでなく査読する人たちの目にも見えていたはずです。この情報は議論の焦点となる部分なので、この写真が曖昧なものならプロシーディングを出せるはずがないのです。

 

ではカミンズ博士の1934年の鑑定が間違い、あるいは捏造? このレポートで博士は、ソログッドが主張するポイントを詳しく見ているので、間違いということは考えられません。博士はこの指紋の件がなければスピリチュアリズムと特に関係なかった人です。結果を偽る理由は考えられません。そして5種類ものワックス、一点はずっと鍵のかかった箱の中に保管されていたものがすべてすり替えられたという考えにも無理があります。

 

私の結論はこうです。

  1. ウォルターと歯科医コールドウェルの右親指の指紋は、当時の鑑定技術では見分けがつかないほど同じだった。
  2. しかし1933年のプロシーディングの時点では、コアの形状にステープルとロッドの違いがあるなど、いくつかの微細な違いあった。
  3. 1934年にカミンズ博士が調べた際に、これらの違いは無くなっていた。

まず1について。当時の人達は、鑑定で同じとされた指紋なら、当然同じ人物のものだと考えていました。指紋が同じ指というのは現代においても見つかっていなく、なぜみんな違うのかが研究課題となっています。ただ、現在の法医学で使われるような精巧な指紋鑑定でも、指紋のすべてを比べているわけではなく、通常は12箇所の特異点と呼ばれる部分だけを比較しています。この12箇所が他人と一致してしまう確率は一兆分の一程度とされているようです。つまり、亡くなった人の指紋が300年分くらいすべて取ってあったとしたら、その中にはあなたの指紋と、12箇所の特異点のすべてが一致するものがありそうだと言えるのです。これが民間の技術となると、機械にも依りますが、千分の一程度の確率で他人の指との誤認識が簡単に起きてしまいます。同じ人なのに拒否されてしまう確率もそれくらいあります。実際私はオフィスに指紋登録をしていましたが、高確率で拒否されるので、今はカードを発行してもらってそれを使っています。

 

現在と比べて1930年代の鑑定技術はもっと低かったことでしょう。となると、いくら指紋の権威であるカミンズ博士でも、当時の鑑定方法では識別できない、それぞれ他人に属するはずの指紋があってもおかしくありません。とは言え、ウォルターとそれくらい同じ指紋が、なぜワックスを提供した歯科医のものなのでしょう。あまりにできすぎていますよね。ではやはりミナが不正を? ミナがトランス状態で不正をした可能性は否定できません。しかし、歯科医と同じ指紋を新しいワックスにつけるには、普通の精神状態で歯科医の指紋のワックスから型を作っておかなければなりません。それにウォルターと歯科医の左親指の指紋が一致しないのはカミンズ博士も認めるところ。さらに密閉された箱に作られた指紋があり、ネガ以外にもポジ、鏡像、一部だけ変化した指紋も作成されたことなどから考えれば、指紋の超常性は明らかなのです。

 

ミナや近しい人の誰かが不正を行ったという考えには無理があります。では、不正を行っていないというのならなぜウォルターと歯科医の指紋はこれほど似通っているのでしょう。私はこの状況が生まれた理由を、超常現象を曖昧なままにしておきたいという、何らかの大きな力が働いたからだと考えます。実は超常現象の歴史をたくさん調べていくと、どうしてもそのような力が存在するとしか思えなくなっていくのです。3の変化も、その力が働いた結果だと私は思っています。

 

この力について、次回から少し詳しく説明していきましょう。